世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
COVID-19向けワクチンと日中韓の連携
2020.08.31
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)という世界的パンデミックが引き続き大きな問題となっている。2020年7月27日の世界保健機関(WHO)の定例記者会見でテドロス局長は,感染者が過去6週間で1,600万人が報告され,約2倍に増えたことになり,宣言されたCOVID-19の6回の緊急事態の中で一番深刻な緊急事態であると述べた。その後日本国内でも感染者数は収束に至っていない。
ワクチンや特効薬が開発されない限り,日本国内はもちろん,世界的な経済活動は難しく,来年に延期された東京オリンピックにも影響を及ぶ可能性がある。治療のための特効薬の開発と共にワクチンの必要性が高まりつつある中で,イギリスや中国,米国のCOVID-19向けワクチン開発のうちいくつかが最終段階に入っている。2020年7月14日付けのWHO報道資料によると,英国アストラゼネカ社とオックスフォード大学,中国北京科兴生物制品有限公司,中国国薬集団中国生物と武漢生物製品研究所,米モデルナ社など4つのグループが第3段階まできた。日本ではアンジェス株式会社が6月30日付けHP資料でCOVID-19向けワクチンの第1/2相臨床試験を大阪市立大学医学部付属病院で開始すると発表したが,日本国内で初の治験になる。
一方,韓国保健福祉部の2020年7月21日のHP報道資料によると,保健福祉部は当日韓国SKバイオサイエンス社,英国アストラゼネカ社(AZ)と三者間協力意向書を締結し,世界で開発リーダであるアストラゼネカと英オックスフォード大学が共同開発中のワクチンの候補物資のグローバル生産のサプライチェーンに参加すると発表した。今回の協力意向書は韓国保健福祉部が橋渡しの役割を持ち,アストラゼネカとSKバイオサイエンスにおいて論議が行われた結果である。協力意向書にはワクチンの公平なグローバル供給のために早くて安定的な生産及び輸出に協力すること,需要の増加に対応するための生産能力を高めること,国内供給の努力など三者間の協力内容が盛られたそうだ。韓国企業がいち早く世界的に注目される優秀なワクチンの世界市場のサプライチェーンに参加したことになる。韓国政府は「ワクチンの開発後の公平な分配と接近性(アクセシビリティ)の確保のための国際社会の連帯努力に積極的に参加する」とした。
韓国大統領府である青瓦台の2020年7月26日のHP報道資料によると,7月20日にマイクロソフト創始者でビル・ゲイツ財団の創設者であるビル・ゲイツ氏から韓国文在寅大統領に書簡が送られ,同氏はコロナ19に対する韓国の対応を称賛しながら,韓国政府とビル・ゲイツ財団との協力を強化するとし,ビル・ゲイツ財団が研究開発を支援したSKバイオサイエンスがワクチン開発に成功すれば来年6月から年間2億回分のワクチンを生産することができると明かした。
COVID-19は世界経済を縮小させ,また不確実性のコストを負わせる。経済的に緊密な関係性を持ち続けてきた日中韓の連携が何より重要である。2020年5月15日に新型コロナウィルス感染症対策に関する日中韓特別保健大臣テレビ会議が開催され,厚生労働省の報道資料によると,日中韓で「自由で開かれた透明性のある適時の情報やデータ,知識の共有の強化」し,「技術的専門機関間の更なる協力や促進,新型コロナウィルス感染症の予防・抑制のための情報・経験の共有の重要性」を認識したという。執筆時点で,日本では中国と韓国を含む大部分の国々からの入国に規制があるが,中国は韓国の間では条件付けで5月1日から中韓企業人の入国手続きの簡素化のために「中韓企業迅速通路」を設けることになった。
6月2日の中国の商務部の報道資料によると,李克強総理は,全人代が閉幕した後の記者会見で,「中日韓は近隣国同士で,我々は経済大循環の中で中日韓の経済小循環を作りたい。例えば中国と韓国には快捷通路が開かれることで,ビジネス,技術などの人員が順調に往来でき,これは生産を再開することに有利で,水辺に近い楼台は真っ先に月の光がさす(「近水楼台先得月」)とも言える」と言った。「近水楼台先得月」は,関係の近いものが優先的にチャンスを得るという意味で,日中韓における協力に願望を表す。
さらに日中韓が経済的に回復するために,やはりワクチン開発が重要であろう。中国の習近平国家主席は,2020年5月18日のWHOオンライン総会で,「中国はCOVID-19ワクチンが研究開発および実用化に入った後で,世界公共財とし,発展途上国でワクチンが入手できるように中国が貢献する」とした。ワクチンの開発は莫大な時間と研究費を必要とするが,日中韓においてもワクチンの開発と供給を地域的公共財と捉え,具体的な協力案件が望まれる現状である。
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