世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.802

自動運転車の開発を巡る情勢の変化とは

福田佳之

((株)東レ経営研究所 シニアエコノミスト)

2017.02.27

 筆者は2015年ごろから自動運転技術の開発を巡る自動車メーカーとIT企業等の関係や彼らの取り組みについて定点観測してきたが,2年前と比べて変化した点が2点ある。

グーグルは自動車メーカーと提携

 まず第1点は,自動運転車の開発を続けていた異業種企業がスタンスを変えたことだ。2010年に自動運転車の開発を発表したグーグルは着々と同車の公道走行実験を続け,その走行距離は320万キロメートルを超えた。アップルも社内で自動運転車の開発を続けていると見られていた。こうした動きに対して自動車メーカーの間ではグーグル等は自動運転車を量産して市場投入するのではないかと警戒を強めていたのである。

 だが,グーグルは16年12月,社内の自動運転の研究開発部門を独立させ,事業会社「WAYMO」を設立し,フィアット・クライスラー・オートモービルズに次いで本田技研工業と提携した。アップルも米運輸当局に宛てた書簡の中で自動運転車をコントロールできるソフトウェアに関心はあるとしているが,それ以外については明らかにしていない。

 もちろんグーグルの自動運転技術は完成したわけではない。彼らはまず自社の自動運転技術の完成度を高めてから,それをもって技術提供先の自動車メーカーをコントロールしながら事業展開するという当初の方針から,自動車メーカーと組んで現在保有する自動運転技術を高めていくとして事業の方向性を切り替えたようだ。その前提には同技術の完成に立ちはだかる数多くの技術的・社会的障壁が関係しているだろう。おそらくアップルも自動運転車の開発を通して同様の認識を持ったと思われる。彼らの方から自動車メーカーに歩み寄らねばならない事情が出てきたのである。

自動車メーカーも異業種と連携強化

 次に2点目として,自動車メーカーが異業種との連携を強めたことがある。彼らはグーグルなどの自動運転車市場への早期参入脅威が和らいでほっとしているどころか,むしろIT企業等との連携を積極果敢に行っている。特に自動運転に関連するビッグデータ解析,次世代移動通信システム,そして移動サービスについては,大手の自動車メーカーも積極的に提携・出資に動いている。

 移動サービスとは,ヒトやモノをある場所から別の場所に運ぶサービスであり,さらに詳細な道案内やメンテナンス提案など快適な移動を実現するための様々なサービスが提供されるものだ。フォードは,移動サービスの世界市場は5.4兆ドルと自動車市場(2.3兆ドル)の2倍以上と見ている。現在,移動サービスを担うウーバーテクノロジーなどのライドシェア企業が台頭している。こうした動きに自動車メーカーは,まずゼネラルモーターズ(GM)が2016年1月に米国のライドシェア企業であるLyftに出資を決め,次に5月にフォルクスワーゲンがイスラエルのライドシェア企業のGettに,そしてトヨタ自動車がウーバーテクノロジーへの出資を発表している。

両者の狙いは走行ビッグデータ

 自動車メーカーのライドシェア企業との提携・出資の狙いは,今後投入する自動運転車の売り込み先の確保だけではない。自動運転車を走らせることで取得できるビッグデータの獲得が最終目的だ。トヨタ自動車は2020年までに日米で販売する乗用車に車載通信機を搭載する予定であり,車載通信機から取得したビッグデータを活用して異業種と組んで移動サービス事業などを展開して新たな市場に打って出るつもりだ。もちろんライドシェア企業も自動車走行から得られるビッグデータを狙っている。

 自動車メーカーと異業種企業は提携を進める一方,走行ビッグデータの獲得を巡って火花を散らせることとなろう。

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