世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.739

中国の苦手種目と経済政策

遊川和郎

(亜細亜大学 教授)

2016.10.24

 日本選手の活躍に沸いたリオ五輪だが,中国は獲得メダル総数70個(うち金26)で,北京五輪の100個(同51),ロンドン五輪の88個(同38)から激減した。メダル至上主義,国威発揚という五輪観からの変化,といった正論に加え,報奨金の激減,また反腐敗運動によって選手のみならずコーチや地方政府関係者など周辺に群がる人たちのインセンティブが減ったことなどが原因として挙げられている。

 ただ中国の体育界では,「中国はネット競技に強いが,ゴール競技には弱い」という分析があるらしい。卓球やバトミントン,3大会ぶりに金メダルを獲得して溜飲を下げた女子バレーなど,双方の陣地に分かれ身体的接触のないネット競技はお家芸であるのに対し,サッカーやバスケットボールのように敵味方相乱れてボールを奪い合い,攻守が瞬時に交代しながら攻撃と防御を行うゴール競技では結果が残せていないというのである。

 個の能力が高い中国人は全員がフォワード型で,チームプレイは苦手との指摘は,ビジネスの現場でもよく耳にする。実際に中国が過去五輪で量産したメダルは跳び込み,体操,射撃,重量挙げ,卓球と個人種目に偏っている。

 個人プレイとチームプレイはさておき,市場経済は基本的にゴール競技型の性格を持つのに対し,中国の経済政策や改革の手法はネット競技型に近い。すなわち,ネット越しに相手の布陣を観察し攻撃を仕掛けるのは得意な一方で,意思統一されたパス回しなどボールの流れを大局的に支配したり,組織的に相手ボールを奪い取ったり攻撃を封じるのは苦手なようだ。人民元改革というのも,これまでネットの向こうにいる敵に対しては当局がコントロール可能だったが,どこから敵がやってくるのか,相手がどう仕掛けてくるかもわからない戦いには慣れていない。もっと直截に言えば,筋書き通りに運べればよいのだが,展開の読めないゲームでは脆さが露呈する。

 中国の経済政策のもう一つの特徴は,窮地に追い込まれると予想できない手が打たれることである。ルールの解釈は当局(共産党)次第であり,公平な審判は存在しない。通常はファウル(反則)でも試合続行,それでもまだ効果がなければより直接的な手法を選択するようになる。国有企業改革は,最初から勝たせるチームが決まった試合なので,途中でルールがころころ変わりながら勝つまで試合は続くことになる。

 中国の経済政策や改革というのはそんな性質ではなかろうか。

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