世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
力は正義
(北星学園大学 名誉教授)
2022.05.09
ロシアのウクライナ侵攻から僅か二カ月足らずで世界は泥沼の途に突入したかのように,深刻な危機意識で充満している。ロシアが牛耳ってきたエネルギー危機などインフレによる生活苦の到来を嘆く以上に,この紛争が果てしなき戦いになり,時に第三次世界大戦勃発の引きがねとして世界の破滅を導く事態も心に留め置かねばならなくなってきたからだ。当然のことながら,ロシアの侵攻は,世界に住むロシア人を含む圧倒的多数の人々によって非合理な暴力行為だと認識され,許さるべき行為では断じてないと非難されている。
アメリカをはじめとするNATO諸国は,ウクライナに軍事的支援を中心とした数多くの支援を行って,ウクライナの防衛能力の強化に全力を挙げている。
またウクライナ一般国民の避難先になるべく多くの国家が手を挙げて努力をしている。日本も遠い国の紛争だとして傍観者になってはいない。
軍事的紛争は一進一退だが,この投稿後の5月9日ロシアはナチスドイツを退けた戦勝記念日に,ウクライナ東部の完全支配等の勝利宣言をプーチン大統領がするのではないかという見方があり,これが大勢だと筆者は思う。何故ならこのロシアの独裁者であり,この度の侵略の最高指導者であるプーチンのロシアにおける支持率は,実に80%を超える高いものだと言われる。情報戦が展開される中で必ずしも正確なデータとは言えないところもあるが,プーチンの今の野蛮な行為を止めようとするロシア国民は極めて少なことは予測に難くない。何故だろうか。日本や欧米の報道では,ロシア政府のプロパガンダの成果だという説が有力だが,確かにそれも要因の一つかもしれない。しかし,最も考えられるロシアの正義は,「力で勝つ」ということではないか。
いうまでもなく世界の常識のひとつとして「非暴力は,暴力に勝っている。暴力に対する非暴力は,無抵抗主義と同じではなく,徹底した抵抗行動によって達成できる(ガンディー)ことだといわれている。国連もまたこのような趣旨に立っており,グテーレス事務総長はプーチン大統領との対談後,「この戦争の勝者はいません。遅かれ早かれ戦争から平和交渉のテーブルへと進んで行かざるをえません。」との談話を発表した。このような認識が常識化して戦争は地上から雲散するのであろうか。
筆者には重い判断であるが,「力が正義であり,勝者が歴史をつくるのだ」という表には出てこない真理を肯定せざるを得ない。さすれば国連改革は,国連軍の常駐配備態勢整備からはじまって,戦後体制の改革を断行しなければ,最も危惧すべき第三次世界大戦は防ぎようがなくなるのではないかと考えるがどうか。勿論ウクライナ紛争は断じてウクライナは負けてはならず,仮想的な「力は正義」であることの姿を世界に示さなければなるまい。
- 筆 者 :原 勲
- 分 野 :特設:ウクライナ危機
- 分 野 :国際政治
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