世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
日本復活への道:普遍的理念と哲学を要求される日本
(富士インターナショナルアカデミー 学院長)
2021.01.25
問題点山積の日本
北はグリーンランドから南は南極(チリ軍基地クラスター)まで,新型コロナは地球上の全大陸に及んだ。このようなパンデミックは人類がこれまで経験してこなかったことであり,人類の歴史をコロナ以前とコロナ以後(収束はまだ見えてこないが)を2分する一大事件である。すべての国がコロナ禍を有事として戦っている。ウィルスと人類の戦争なのである。
折しも,バイデン政権が誕生した。この影響はわが国にとっても大きいものがあると見なければならないだろう。トランプ政権のみならず米国に従っておれば日米の基軸は強固であり,それでよいという風潮はイラク戦争以降特に強まったといってよいだろう。
筆者は,今後の日本が問われていることがなんであるのか,この時期に本気で為政者のみならず国民が考え抜くことが求められていると強く感ずる。
現在,日本が置かれている状況・課題をあげると,コロナ禍の克服,国防の安全保障問題,食糧の安全保障問題,失業問題,所得と教育の格差問題,少子化問題,日本が持てる国力・総力をどのように駆使して経済の持続的発展を遂げるかという問題,地球環境問題への取り組み,エネルギー問題,ジェンダー・ギャップ問題(2019年世界経済フォーラム発表で,日本は世界121位),これらを総合して,国際社会から評価される国家であるかという問題。
ここにあげただけでも,解決が容易ではない問題が累積している。これでは,若者に「希望」を持って奮起しようと叫んでも,若者は本来持っている活力の芽が摘まれ,無力感に浸り,周りの小さな世界だけに閉じこもって,思考停止に陥っても非難できない。
未来の哲学を持った日本の構築
筆者は,大学院では,アジア環境協力特論を担当し,修士論文指導でも,上記課題に関連した数名の論文を受け持った。また,学部では,応用経済学3科目を受け持った経験から,ITI(国際貿易投資研究所)の季刊「国際貿易と投資」で食料問題や水問題,土地問題などを取り上げてきた。その経験から,上記にあげた問題点の解明と解決策については,それぞれの項目で大論文が必要なものばかりであり,本コラムで一つひとつを取り上げることは不可能であることが分かっている。
筆者は,常日頃から,日本には,日本の未来をどのような国家にするかという確固とした哲学と思想が無いことについて,このままではいけないという思いを抱いてきた。
バイデン新大統領の就任演説を深夜のCNN放送で聞くことができたが,彼のメッセージは,多くの課題(緊急課題としてはコロナとの戦い)を担った大統領として,全国民の一致,融和のもとに,前進すべきことを自分の言葉で語っていたことに感銘を受けた。
病気のため短期間で総理を退いた石橋湛山は,『戦後日本の針路と政界への登場』の中で,「私がここで第一に訴えたいのは,国の独立と安全を防衛するのに一番たいせつなことは,国内が分裂しないことである」(1968年「時言」)と,53年前,バイデン就任演説を見抜くかのように喝破している。
アメリカの大分断で,利益を得た国はどこか。読者は良く分かっておられると考えているが,日本が国際社会で認められる普遍的な思想に基づく哲学に立って,コロナ禍において,国民が一致し,総力を挙げて日本の復興に尽くし,大噴火や大震災に耐えうる強靭な国作りをすれば,それが国防費の何倍にも勝る安全保障であることを訴えたい。そこに,新たな起業や新技術も生じるであろうし,世界に貢献できる製品も生れると確信するものである。
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高多理吉
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