世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1891
世界経済評論IMPACT No.1891

リモートセンシング解析による全球経済システムの諸相

末永 茂

(エコノミスト  )

2020.09.21

 ガリレオは望遠鏡を覗き世界を変えた。そして,現在この望遠鏡技術は我々の足元,つまり地表を丸ごと観測できるまでになった。本稿はその観測データの一端を紹介するものである。Googleによって誰でもいつでも,この情報網にある程度はアクセス出来るようになっているが,そのことが経済社会に如何なるインパクトを与えているのか。これらは必ずしも議論が尽きているわけではない。グローバル化に善悪はないし,単なる歴史動態の一過程に過ぎないと捉えるべきだが,近現代史の急激な人口増加現象をどのように評価すべきなのだろうか。そして,深化するグローバリズムは各地域の文化人類学的な理解や容認を許さず,世界の単一化による生産の効率化の進展と,その反作用として紛争や対立が尽きない状況を生み出しつつある。

 全球経済システムを立体的に観測するツールにリモートセンシング技術がある。この解析画像情報に関しては,「リモート・センシング技術センター」の加藤善一・特任参事と研究開発部のスタッフによって紹介してもらった(注1,2,3)。画像項目から「森林資源の全球モザイク画像」「土地利用状況」「都市集中」「地球温暖化の推移」「海面水温観測」開発による「砂漠化現象」等々の情報を読み取ることができる。リモートセンシング技術はデータの集積・加工によって,特定地域の観測や詳細な環境変化も瞬時に把握できるところに最大のメリットがある。

 経済学者はこの地球環境の変動情報を踏まえて,国際政策をどのように立案すれば良いのであろうか。過去数100年の経済統計が比較的簡略にパソコンで処理できるようになっている。これらの連結分析によって,統制・計画経済期と市場経済期の歴史的社会実験としてのデータ比較も可能である。技術データと経済社会政策の分析は相互補完的でなければならない。経済成長モデルの想定が地球環境的に耐えられるものなのかも,改めて俎上に載せなければならない。第2次世界大戦後,各地で地域紛争は繰り返されたが,全面的な戦火の拡大はなかった。朝鮮戦争での原爆使用はマッカーサー解任によって,封印されたといわれている。その影響もあったのか総体としては長過ぎた(平和的)戦後が続き,成長主義のみが主流派となり,社会的諸制度は変革の時期を見失ったように思える。

 現在進行中のCOVID19問題は,ボーダレス社会の過密社会における目まぐるしい人的移動と,それに伴う問題を露呈した。正体不明の病原菌やウイルスを「ファクターX」と呼んでいるが,以前からこれらの文学的総称は「コウモリ」と名付けられてきた。生物としてのコウモリではなく,記号としてのギリシャ神話的名称である。ウイルスの生存とは「変異と選択」の過程にある。そして,変異の特性は生物自身の内的な性質に依存するとされている。この基本法則はダーウィンの進化論『種の起原』『人類の起原』で,ほぼ確立している。その後,電子顕微鏡の発達とその事例研究によって,「小さな連続的変異がもとになって自然淘汰が行われる」と考えたダーウィン説は修正されている。「そのような偶然変異は遺伝しない」と量子力学者のシュレージンガーは『生命とは何か---物理的に見た生細胞』で指摘している。こうして,分子生物学の領域を開拓した。だが,基本原理の認識はそれ程変わっていない。

 余りに原理原則的な発言は封殺される傾向が強いが,思想としては永遠に残るし,形を変えて継承される。なぜなら,それなしで社会は維持できないからである。情報洪水の中で有益な情報とその吟味が試されている現在において,アリストテレスが今なお健在なのはそのためでもある。これら両知見の結合が待たれる所以である。

[注]
  • (1)加藤善一「人工衛星によるリモートセンシング技術の動向」,月刊『電気計算』電気書院,通巻1166号,2020/03。pp.28-34。
  • (2)加藤善一,山本彩「リモートセンシングデータによる国土管理のためのデータベース」,月刊『OPTRONICS』株式会社オプトロニクス社,通巻463号,2020/07。pp.118-123。
  • (3)一般財団法人「リモート・センシング技術センター」のHPはhttp://www.restec.or.jp
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1891.html)

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