世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1873
世界経済評論IMPACT No.1873

コロナ禍と戦う世界の日本人起業家達:ピボットで活路を見出す!

佐脇英志

(都留文科大学 教授)

2020.09.07

 本稿は,本欄5月26日発信の「コロナ禍と戦うアジアの日本人起業家達」の続編である。今回は,アジアから世界にエリアを広げて,Zoom,SNSを駆使して7人の海外日本人起業家にインタビューを試みた。

 日本では,コロナ禍の影響で,上場企業の純利36%減,6割が減収減益見通し,外食1000店超閉鎖等,経営環境の厳しさを訴える報道が続いているが,海外の日本人起業家達がおかれている経営環境はさらに悲惨である。主要顧客である外国人はゼロとなり,ロックダウンで手足も捥がれ,日本政府からの援助は得られず,外国企業ゆえにその国の支援金を得られることも稀である。コロナ禍でどん底まで落ちた起業家達がピボットで這い上がってくる様子を分析する。

 恐竜のように肥大化かつ硬直化した日本の大企業の組織では,今までの成功モデルを捨て,ピボット(事業転換)するという決断はなかなかできない。これを駆使できるのはベンチャー企業の最大のメリットであり,その状況を論じる。

 セブ島と東京で,留学学校とコールセンターを経営している早川諒氏は,コロナ禍でセブ島の全学校の休校を命じられ,学校運営が突如停止となり,売上ゼロとなる。コールセンターも,いくつかの部署がクライアント指示により稼働停止となった。これにより,既存事業で被害の少なかったコールセンター事業に全員で集中し,日本で休校中の中学校や高校を回り,オンライン英会話事業を拡大させた。さらに,オンラインでヨガの資格がとれる資格取得講座の新事業を開始した。これらの施策により,コールセンターの売上は瞬間的に下がり,留学学校の売上もゼロとなったが,オンライン英会話の売上が,コロナ以前の200%アップとなり,コロナ以前と比べても最高売上を達成した。

 バンコクを中心に求人メディアTalentExの越陽二郎氏は,2018年からロシアで,ロシア圏エンジニアの日本就職支援事業を営んでいたが,新型コロナウイルスの感染拡大でほぼ売上ゼロになった。試行錯誤した結果,ロシアの現地若手メンバーらとオンラインスクール事業「CyberSamurai」を設立。ロシア語圏で,日本語だけでなく日本のビジネス習慣・IT業界事情・日本人のコミュニケーション文化について学べるオンラインスクール/コミュニティを営む。8月開講で,来年,人材事業と合わせて年商数千万円を目指す。

 ドイツの矢野圭一郎氏は,2017年から欧州と日本間の企業とスタートアップを結ぶビジネスマッチングプラットフォームとして,Interacthub GmbHを経営していた。コロナを転機に,世界トップレベルの高度開発者をリモートチーム化して企業のDX課題を解決するプラットフォームであるSWAT Labを設立。既に,1000人のウクライナ人開発人材を集めている。今回日本のVCよりシード資金の調達に成功したが,ピッチやその後の打ち合わせ等の全ての活動は,ドイツから,Zoom等のリモートで行ったとのことである。

 タイの観光地ラヨーンでダイビングショップと宿泊施設を経営する幸長加奈子氏も,コロナ禍に直面し,海外からの客がゼロになった。そこで,ターゲットを国内へと切り変えて,格安のパッケージを販売し,子供向けおもちゃの充実,ペット連れ可,BBQコンロ貸し出しを開始した。ダイバーの宿という従来のイメージから家族連れに合う内容へ転換することにより,現在では毎週満室の状況である。さらに,パタヤのダイビングショップを買収し,船合計5隻体制へと業容を拡大した。

 ミャンマーの山浦康寛氏は,2015年ヤンゴンでFINALsec Co.,Ltd.を設立し,シェアハウス事業,外国人向け英語・ミャンマー語家庭教師/オンライン学習事業,ミャンマー語検定事業等を行っていた。コロナ禍に直面し,打撃を受けるが,丁度今年より1on1オンライン学習を開始し,8月時点では,講師数36人,生徒数1114人と急拡大し,既存事業の打撃をカバーしている。

 ケニアの貧困・食糧問題解決に取り組む農業サプライチェーンマネジメント会社「Alphajiri Ltd.」(アルファジリ社)のCEO薬師川智子氏は,貧困に苦しむケニア・ミゴリ郡の小規模大豆農家に対し,種子や肥料の貸与・農業指導などの生産量と品質を向上させるシステムを提供することで,収入向上をサポート。収穫された高品質な大豆を安定価格で買い取り,現地の加工メーカーに販売している。しかし,今回のコロナ禍で農作物の販売先のレストランが閉じてしまい売り先を失ってしまった。これに対し,実店舗を作り,一般消費者向けに直接販売に乗り出した。これにより,業者によって安く抑えられていた販売価格を自分でコントロールすることが出来,一気に業績が改善した。

 最後に,インドのバンガロール,ニューデリーで,日本人向け無料情報誌発行を軸に,人材サービス,コンサルタントを営む柴田洋佐氏は,コロナ禍で事業の柱である情報誌休刊を余儀なくされた。主要広告主のインドホスピタリティ業界の壊滅的打撃と読者である在印邦人が,約10,000人から1,000人に激減したことが原因である。粉骨砕身の結果,9年間で培ったネットワークを使い,インド進出支援事業に集中。インポーター,ディストリビューター,リテーラーなどを取りまとめ,イーコマースも活用してビジネスを展開。結果,老舗日本酒,製茶メーカー,酒屋のインド進出が決定し,目下進出準備の支援を行っている。

 海外のコロナ禍の厳しい経営環境下,多くの日本人が断腸の思いでビジネスを閉めて日本に帰る中,歯を食いしばってピボットを繰り返している日本人起業家達がいる。ビジネスには,必ず突破口がある。成功の分岐点はそれを見出しチャレンジするか否かである。コロナ禍の日本で,途方に暮れているビジネスマンがいたら,不屈の海外日本人起業家達をロールモデルとして,最後までピボットを繰り返してチャレンジしてほしい。必ず道が開けるはずである。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1873.html)

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