世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1386
世界経済評論IMPACT No.1386

米中貿易摩擦は輸出依存度・中国依存度の高い韓国経済に打撃

高安雄一

(大東文化大学経済学部 教授)

2019.06.17

 日本では5月13日に3月の景気動向指数が公表され,基調判断が6年2カ月振りに,景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に転じた。そして4月の数値による判断も悪化のまま変化がなかった。これは日本の景気が後退に転じた可能性を意味する。

 日本の景気動向指数による景気判断はCI(コンポジット・インデックス)一致指数によってなされる。景気動向指数に類似する指標として韓国には景気総合指数がある。そして中でも同行総合指数からトレンドを除いた「同行総合指数循環変動値」が特に重視されている。

 韓国の同行総合指数循環変動値を見ると,2019年3月までは12カ月連続で前月差がマイナスとなり,4月も変動がゼロであった。この動きは,韓国では昨年春頃から日本に先んじて景気が後退に転じたことを示唆するものである。

 景気を総合的に判断する指標からみるかぎり日韓とも景気が後退していると判断できるが,その要因は米中貿易摩擦の影響である。米中二国間でみると貿易摩擦の影響は主に中国景気の後退という形であらわれている。これはアメリカ向け輸出が減少したことによるものであるが,中国の景気後退は自国内でおさまることなく,様々な国に影響を及ぼしている。特に韓国は,輸出依存度が高い上に,輸出の中国依存度が高いので大きな影響が出ている。

 経済が輸出に対してどの程度依存しているのか測るためには,GDPのうち国外で最終的に需要される部分の比率(国外最終需要比率)をみることが望ましいが,OECDとWTOが共同で作成し2013年から公表を始めたTiVA(Trade in Value-Added)指標によりこれが把握できるようになった。2016年における韓国の国外最終需要比率(2018年12月公表)は29.4%であり,この数値は日本の12.6%を大きく上回る数値となっている。

 次に自国で生産された付加価値で輸出されたもののうち,どの程度が中国の最終需要に向かっているかについてである。韓国から中国への輸出は部品など中間財が多く,韓国が輸出した部品が中国で完成品に組み込まれ第三国に輸出されることが少なくない。この場合の部品の最終消費地は中国ではなく第三国となるため,輸出金額が多くても中国の景気が韓国に影響するとは限らない。

 中国の景気変動の影響が大きいのか測るためには,同じくTiVA指標から把握できる,国外で最終的に需要される付加価値に占める中国による需要割合をみる必要がある。韓国の割合は25.3%であり,これはOECD加盟国ではオーストラリアに次いで2番目に高い。なお日本の数値もOECD加盟国の中では比較的高い20.6%であるが,この数値は韓国を下回っている。よって経済の輸出依存度,輸出の中国依存度ともに韓国は日本より高く,中国の景気悪化の影響を強く受けたと考えられる。

 今後,米中貿易摩擦が収束するのかさらに状況が悪くなるのか不透明であるが,状況が悪くなった場合は韓国の景気後退が長期化・深化することが考えられる。もちろん米中貿易摩擦の解決まで長引けば,日本の景気も当然影響を受けるが,韓国ほどの影響を受けることはない。中国経済にはこの他にも不動産バブルの崩壊など様々なリスクがあり,韓国経済は常に中国リスクに直面している。短期的には難しいが,韓国は輸出の軸足を,アセアンをはじめとしたアジア諸国に多角化するなどして,中国経済発のショックを分散することが求められている。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1386.html)

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