世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
対韓国輸出管理適正化で韓国は脱日本を果たせたか:個別輸出に切り替えられた3品目の動き
(大東文化大学経済学部 教授)
2021.03.22
2019年7月1日に発表された対韓国の輸出管理適正化に関する措置によって,日本から韓国にフッ化水素,フッ化ポリイミド,レジストを輸出する場合,契約ごとに輸出許可が必要となった。これらは主に半導体製造に欠かせない素材であるが,韓国はこの措置を受けて,これら3品目のみならず日本から輸入している部品・素材について,他国への代替や国産化を行うことを打ち出した。対韓国の輸出管理適正化に関する措置から1年半以上が経った現在,これら素材の韓国の日本からの輸入はどうなったのであろうか。3品目について措置前である2018年と措置後である2020年の数値の変化を順に見ていくこととする。
まずレジストである。措置前の2018年に3億2,000万ドルを輸入していたところ,措置後の2020年には3億8,000万ドルに増加している。この間,半導体需要が伸びて生産自体が増加したことも考慮する必要はあるが,この数値から判断すれば国産化が進んだとは言えないだろう。そして,日本からの輸入は3億ドルから3億3,000万ドルに増加し,輸入シェアも93.2%から86.5%と低下はしたものの圧倒的なシェアであることには変わりがない。
次にフッ化水素である。輸入額はトータルで2018年の1億6,000万ドルから7,000万ドルに半減しており,これは国産品の代替が成功している可能性がある。さらに国別シェアは中国が2018年の52.0%から2020には74.9%に高まった一方,日本は41.9%から12.8%に大きくシェアを落としている。フッ化水素は純度に差があり,日本は高純度の製品に強い。よって高純度製品についてまで該当するとまではいえないが,総じてみればフッ化水素は,国産化や他国への代替が進んだと考えられる。
最後にフッ化ポリイミドである。輸入額は2018年の2,334万ドルから2020年の3,771万ドルに大きく増加しており,レジストと同様,国産化は進んでいないと考えられる。また日本からの輸入シェアは2018年の84.5%から2020年には93.8%に高まっている。よって他国への代替も進んでいない。3品目の動きから判断すれば,フッ化水素のように総じてみれば国産化や他国への代替がなされたものもあるが,レジストやフッ化ポリイミドはなされておらず,国産化や他国への代替が進んでいるとはいえない。
輸出管理適正化に関する措置が実行されてから1年半,この措置については解決の糸口すら見えない状況が続いている。しかし,個別輸出に切り替えられた3品目については,少なくとも2品目は国産化や他国への代替が進んでいるとはいえない。韓国ではビールなどを中心に日本製品の不買運動が起こったが,必要なものは日本からきちんと輸入している。日韓経済関係は経済的合理性に従って淡々と進んでいるようである。
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