世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
「開国後」のミャンマーが直面する課題
(金沢星稜大学 教授)
2017.07.03
ミャンマーは,2011年3月に民政移管し,テインセイン(Thein Sein)大統領による新政権が樹立された。
これ以降のミャンマーの制度面の変更をみてみる。
2012年11月には,24 年ぶりに外国投資法が改正された。
2013年には,金融制度面での新たな改革の動きが見られ,同年7月には,中央銀行法が改正された,これにより,中央銀行が財務省から独立した。また,同月,証券取引法が制定された。
2014年1月には,経済特区法が改正され,特区進出企業に外国投資法を上回る優遇策が提示された(注1)。
2016年3月にはティン・チョウ(Htin Kyaw)大統領が率いるNLDによる新政権が開始された。
ミャンマーへの進出の土壌づくりがここ数年で少しずつであるが整ってきていることがわかる。
ミャンマーへの貿易・投資上のメリットは,いくつかあげられるが最も大きな理由が豊富で安価な労働力,消費市場としての魅力(約5,100万人)などがあげられる。
他方,リスクとしては,電力供給をはじめとするインフラ面の脆弱性である。
これ以外に,今後大きな課題としてあげられるのが以前から問題視されてきた賄賂の要求などの解消である。これはミャンマーに限ったことではないが,2017年3月13日に筆者がこのサイトに寄稿した際にも述べたが,ワンストップサービスの導入はこの解消を目指すことも大きな目的としている(注2)。
世界汚職度指数を“Corruption Perceptions Index 2016”でみてみると(注3),ミャンマーは,176か国中136位である。2014年の176か国中156位より少し改善したが,東南アジアではカンボジアの156位とともに汚職度が高い。
この払拭こそがまず第一であると考える。
そのためにはどうすればよいか。
ミャンマーへの投資リスクに必ず入っている法律面での不透明さの解消はひとつの解決策である。
経済特区以外でも法律面での緩和やティラワ経済特区で行われているワンストップサービスを他の地域にも拡大していくことがひとつの解決法となるのではないか。
例えば合弁契約書をつくる際に法律面,裁判面が不安となり,外資による投資がしにくい。そのためミャンマーへの外国直接投資は,シンガポールなどを迂回して投資することになる。シンガポール経由ならASEANの税務上の恩恵を受けることができるからである。
これらの外資による投資面をはじめとする法律面の不透明さを解消することが今後の大きな課題である。この法律面の整備についても人的な協力を含め日本は最大限の協力をしていくべきである。
そして,2011年の「開国」後6年という点も考えあわせれば,長いスパンで今後の行方をみていかねばならないことも肝要である。
[注]
- (1)堀江正人調査レポート「ミャンマー経済の現状と今後の展望〜動き出したアジアのラスト・フロンティア〜」三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部,2015年6月1日
- (2)川島哲「ミャンマーに導入された日本電子通関システム」2017年3月13日世界経済評論IMPACT
- (3)“Corruption Perceptions Index 2016”,2017年6月16日アクセス。
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