世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.3102
世界経済評論IMPACT No.3102

2026年に向けてのバングラデシュの展望と課題

川島 哲

(金沢星稜大学経済学部 教授)

2023.09.11

 経済発展が著しいバングラデシュは2026年に先進国への輸出品の関税が免除される後発開発途上国(LDC:Least Developed Country)を卒業予定である。2022年末に2026年を見据えたEPAの共同研究(あり得べき日・バングラデシュ経済連携協定(EPA)に関する共同研究会合)を立ち上げ,2023年4月からその共同研究を開始させた。この背景にはバングラデシュの「後発開発途上国」卒業後は,LDC向けの特恵関税制度の対象外となり,主要輸出品である縫製品に対して関税が課される場合もあるため,価格面での競争力は明らかに低下するためである。

 では以下にバングラデシュの現状と課題について考察する。

 バングラデシュの近年の経済成長は目をみはるものがある。バングラデシュの1人当たりGDPをWorld BankのGNI Per Capita ,Atlas Method(current US$)(注1)でみてみると2022年のそれは,2,820US$となっており,10年前(2012年)の970US$から約3倍となり急激な右肩上がりでの上昇を続けていることがわかる。経済面では,主力の衣料品などから代替する輸出促進策が急務であり,人口1億7,079万人(2022/2023年度予測 バングラデシュ統計局)と大きな有望な市場である。ジェトロの調べでは(注2),バングラデシュに進出している日系企業(駐在員事務所を含む)は2023年5月時点で338社となり,10年前(2013年)の167社から企業進出数は約2倍となっている。日本企業の投資額も2017/2018年の2,805万ドルから2021/2022年1億2,200万ドルと4年間で4倍超となっている。ジェトロが2022年12月に発表した『2022年度 海外進出日系企業実態調査 アジア・オセアニア編』(注3)によれば,在バングラデシュ日系企業の71.6%が今後1~2年の事業展開を拡大すると回答している。さらに市場規模及び成長性に関しても上位に入っており今後の成長が期待されている。

 World Trade Statistical Review 2023(注4)やWTO Trade Maps(注5)などによれば,衣料品の輸出世界1位は中国で,輸出額1,820億ドル(前年比4%増),31.7%のシェアを占めているが,国単体でみてみると2位がバングラデシュで,輸出額450億ドル,シェアは7.9%となり,前年比27%増と主要輸出国の中でも際立った成長を見せている。2023年02月27日ビジネス短信(注6)やバングラデシュ輸出振興庁が2023年2月に発表した輸出統計(注7)によると,2023年度(2022年7月~2023年6月)における2022年7月~2023年1月の輸出額は324億4,750万ドルで,前年同期比9.8%増となった。その中で,衣料品は85%を占め,その輸出額は274億1,802万ドルで14.3%増だった。その内訳では,ニット類は12.7%増の149億6,038万ドル,布帛(ふはく)類は16.3%増の124億5,764万ドルとなった。このようにバングラデシュは衣料品を主要輸出品として経済をけん引してきたことがわかる。

 では,最後に課題としてはいかなる点があげられるか。

 主要輸出品である衣料品をはじめとした縫製産業は労働集約的産業であり,安価で豊富な労働力を求めることのみならず,今後いかにクリエイティブな産業として生まれ変わり,そのための技術力の向上をいかにするか注目していきたい。単に安価だけでなく高付加価値の製品でなければ先進国の消費者はふりむかず購入もしない。高付加価値製品を生み出すための従業員教育をいかにしていくかについては進出している日系企業等の課題となる。ジェトロ投資コスト調査によれば(注8),最新の数字でワーカーの月額給与127USドルであるが,経済成長とともに人件費が高騰した際にいかに付加価値を高くした製品を先進国へ輸出できるのかも考えていかねばならない。

 さらに冒頭に触れた日本とバングラデシュのEPAを敷衍し,石川幸一・清水一史・助川成也(2022)『RCEPと東アジア』(文眞堂)213ページでも触れられているが,市場規模や経済成長性などからRCEPへの参加についても期待する声が聞かれる。この点についても今後注視していかねばならない。

[注]
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article3102.html)

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