世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.541

南シナ海に関与せよ

津守 滋

(東洋英和女学院大学 名誉教授)

2015.11.24

 南シナ海に荒波が立っている。中国の拡張主義的進出がその原因である。南シナ海は,中国の海洋進出の当面の最重要の標的である。

 あれよあれよという間に,10以上の岩礁で埋め立て工事を進め,この人工島を自国の領土と主張している。これらは暗礁で,満潮時には水面下に沈んでいたものである。国連海洋法上,島と認められるための要件は,満潮時でも水面上に頭を出しており,また人間の経済活動が行われる必要がある。したがって,水面下の岩礁の埋め立て地から半径12海里の海域が自国の領水との主張は,認められない。しかし中国は強引にこの海域を自国の領水と主張し,距岸12海里への他国の船舶の自由航行に障害を設けている。

 中国側は,この問題は,「中国の主権内の問題」とし,その目的を「軍事防衛の必要を満たすため」と公言している(5月末にシンガポールで開かれた,「シャングリラ・ダイアローグ」での副参謀長の発言)。この問題を解決するためASEAN諸国は,関係国の行動規範を作るべく中国に働きかけているが,中国は基本的には多国間での解決に消極的で,特に法的拘束力を持つ文書の作成には同意していない。

 でアメリカは,南シナ海の航行の自由を確保する観点から,10月20日には中国が3000m級の滑走路を建設しているスビ礁上で,P8A機で偵察飛行し,また26日には,ミサイル駆逐艦ラッセンをその12海里内で航行させた。中国側は,「想定外の事態を招く非常に危険な行為」であるとして非難し,またこの米艦船を追尾,関係水域より退去するよう警告を発したとする。しかし米側は今後も同様の措置をとると,予告している。

 日本として何をなすべきか。日本の貿易の死命を制するこのシーレーンの動向に無関心ではありえない。中国は,米国などと並び,日本もこの水域の「域外国」とみなし,いかなる関与も認めないとの立場である。しかし国際法違反の中国の行動に異議申し立てを行うことは,日本の権利でもある。あらゆる国際的な場を通じて,日本がこの問題の当事国であることを大声で主張し,「法の支配」の必要性を叫び続けるべきである。必要な監視活動にも参加するべきである。

 この水域の秩序の構築と維持のため,多国間の枠組みを作ることを提案するのも一案であろう。

 言うまでもなく,同じく中国と対峙している東シナ海の方が,日本の優先課題である。とはいえ,南シナ海についても日本はlegitimate stakeholderである事実を,国際的な場裏で,繰り返し強調し続けるべきである。

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