世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
インドネシアBRICSに正式加盟
(亜細亜大学 特別研究員・ITI客員 研究員)
2025.01.13
2025年のBRICS議長国であるブラジルの外務省は1月6日,インドネシアのBRICS加盟が全会一致で承認され,正式加盟(full membership)したと発表した。2023年にヨハネスブルグで開催された首脳会議にはジョコ大統領が参加したが,当時はASEAN議長国としての参加であり,インドネシアはBRICSへの参加を見送っていた。2024年1月にはエジプト,UAE,イラン,エチオピアの4か国の加入が認められ,10月にロシアのカザンで開催された首脳会議ではASEANの4か国を含む13か国がパートナー候補国に選定されていた。2025年1月にインドネシアが正式加盟したことでBRICS加盟国は10か国となった。なお,2023年に招待されたサウジアラビアは加盟をまだ決定していない。
ブラジル外務省の声明では「東南アジア最大の人口と経済規模を持つインドネシアはBRICS加盟によりグローバルガバナンスに関わる制度改革を他のメンバーと共有し,南南協力に積極的に貢献する」と述べている。またインドネシア政府も「BRICS加盟は他の開発途上国との協力と連携を推進する戦略的な方法であり,食糧とエネルギー安全保障,貧困削減,人的資本開発というプラボウォ政権の重点施策に合致する」と声明で述べている。加えて「プラボウォ大統領の外交方針は全方位善隣外交(omnidirectional good neighbor policy)であり,BRICS加盟は特定の陣営に加わることを意味せずインドネシアは先進経済を含め他のフォーラムへの関与も継続する」とインドネシア政府は表明している。
インドネシアを含むASEAN主要国は,大国の対立の中で中立を維持し,両陣営と経済および協力関係を進める均衡外交を進めている。インドネシアはBRICS加盟の前に米国主導のIPEF(インド太平洋経済枠組み)に参加し,CPTPPとOECDへの加盟も進めている。BRICS加盟はインドネシア政府が説明しているように均衡外交の一環である。
ASEANでは,タイとマレーシアが2024年央に加盟を申請したが,昨年の首脳会議で正式加盟の意思を表明したインドネシアが先に加盟を認められた。ASEANの盟主といわれるインドネシアの戦略的重要性からインドネシアの加盟が優先されたと考えられる。
インドネシアの加盟によりBRICSの世界人口に占めるシェアは41.2%に達し,世界のGDPに占めるシェアは27.3%に拡大した。これは,EUのGDPの世界シェア14%,米国の同シェア25%を上回り,世界経済におけるBRICSの存在感は増している。トランプ氏の大統領就任前から世界の政治経済は混乱の様相を呈しており,就任後はさらに不確実性と不安定さが増すことは確実である。貿易など経済的実利とともにトランプ2.0により生じる不安定な状況へのヘッジとしてBRICS加盟を望むグローバルサウスの国はさらに増えるだろう。
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