世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.3016
世界経済評論IMPACT No.3016

中国の人口政策は誤りだったのか?

岡本信広

(大東文化大学国際関係学部 教授)

2023.07.03

 ここ数年中国の少子化が急速に進んでいる。出生数を見ると、19年1465万,20年1200万,21年1062万,22年956万と漸減している。今後人口減少のスピードが速まる可能性が高い。改めて中国の人口政策を歴史的に検討してみよう。

 出産奨励:1949年中国の人口は5.4億人であり,毛沢東は人口が重要であるとの観点から出産を奨励し,避妊具等の生産・輸入を禁止する方針を打ち出した。1953年の第1回人口センサスの結果は5.88億人であった。

 出産抑制:1953年頃から共産党首脳部で出産奨励に関する疑義が出始め,出産抑制の方針が1956年に出る。大躍進後の飢饉などがあったあと,1962年には「計画生育をきちんと提唱することに関する指示」が出され,一組の夫婦には2人の子どもがふさわしい,ことが示された。そして1964年には国家計画生育委員会が設立される。1964年の第2回人口センサスの結果は7.05億人であり,年平均成長率は1.66%と高い水準であった。1973年には「遅く,まれに,少なく(晩,稀,少)政策」が提出される。これは男子は25歳,女子は23歳で結婚し,生育期間は4年ほど開け,二人の子供に抑えるというものである。

 一人っ子政策:1980年に一組の夫婦は一人の子どもという「一人っ子政策」が打ち出される。1982年の第3回人口センサスの結果は10.17億人であり,年平均成長率は2.05%と非常に高いものであった。その後1982年の第12回党大会で一人っ子政策を代表とする計画生育は基本国策になった。各地域で計画生育条例が制定され,各地方に合わせた形で強制的な一人っ子政策が実施されることとなる。1990年の人口は11.43億人で年平均成長率は1.48%,2000年は12.67億人で平均成長率は1.04%(1990から2000)まで減少した。

 出産緩和:50年近い出産抑制の結果,人口拡大のスピードが落ちたこと,一人っ子を失った夫婦の悲しみを憂う「失独」現象が注目された。2002年に「人口と計画生育法」が試行され,一人っ子同士の結婚では2人の子どもが認められるようになった。2010年の第6回人口センサスでは13.41億人であり,年平均成長率が0.57%と急低下した。結果,2013年第18期3中全会では,計画生育は基本国策とするものの,夫婦の片方が一人っ子の場合2人の子どもが認められるようになった。高齢化が忍び寄りはじめ,2016年には「人口と計画生育法」が修正され,全面的に「二人っ子政策」の実施となった。2021年の第7回人口センサスは14.12億人,年平均成長率は0.52%と低下傾向が明確になった。同年再度「人口と計画生育法」が修正され,事実上の計画生育が終了し,3人までの子どもを持つことが認められたのである。

 以上が人口センサスと人口政策の変遷である。この20年ほどの政策変化が激しく,政府の政策転換が遅かったという意見も多いが,各回の人口センサスの結果に基づいた政策的判断とすれば,適当であったともいえるかもしれない。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article3016.html)

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