世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.2606
世界経済評論IMPACT No.2606

仏・上院議員訪台団と「大綬卿雲勲章」の受勲:外国議員団訪台の常態化

朝元照雄

(九州産業大学 名誉教授)

2022.07.25

1年足らずに,仏議会から3度目の訪台

 仏・上院議員外交委員会副委員長で,親台派グループ副代表のジョエル・ゲリオ(Joël Guerriau)を団長とする超党派議員訪問団一行6名が6月8日から13日の日程で訪台した。外交バブル方式の入国で,昨年10月の上院議員,12月の議会議員に継ぐ,この1年足らずに3度目のフランス議会からの訪台団である。

 訪問団は蔡英文総統,蘇貞昌行政院長(首相に相当),游錫堃立法院長(国会議長に相当),顧立雄国家安全会議秘書長(議長に相当),吳釗燮外交部長(外相)と会見し,文化,経済関連機関などを訪問した。

 ジョエル・ゲリオ議員のほか,4名の上院議員はヴィンセント・エブル(Vincent Eblé)財務委員会副委員長,シルビー・ゴイ・シャベント(Sylvie Goy-Chavent)議員,ダニー・ワッテブレッド(Dany Wattebled)議員,ルドビク・ヘイ(Ludovic Haye)議員である。

 ゲリオ上院議員は長年にわたり,仏台議会の交流に大きく貢献してきたことで知られ,世界保健総会(WHA),国際刑事警察機構(INTERPOL),国際民間航空機関(ICAO)と気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)の台湾加盟についても,フランス政府に書面と口頭で強く支持を訴えている。

 2021年5月6日に,ゲリオ上院議員は上院副議長で親台派グループ代表アラン・リシャール(Alain Richard,17代目の国防大臣を歴任)と共に議会において,「台湾の国際組織加盟支持」の決議案を賛成304票,反対0票,棄権19票と,ほぼ全会一致で可決させた。

 ゲリオ上院議員は2018年に継ぐ2回目の訪台であり,今回の訪台はインド太平洋地域の平和と安定に関する安全保障情勢,半導体産業サプライチェーンのパートナーシップなどについて,仏台関係議題の意見交換を行った。

ゲリオ上院議員の「大綬卿雲勲章」受勲

 9日午前,訪問団一行が総統府を訪問した際,蔡総統はゲリオ上院議員に,長年における台仏間議会の関係強化に対する優れた貢献を表彰し,「大綬卿雲勲章」を授与した。蔡総統は,今後の台仏間の様々な領域で協力を一層深化させることに期待を示した(獲贈「大綬卿雲勳章」法參議員葛里歐)。

 また,蔡総統は,近年の台仏間議会の交流が早いスピードで進展し,昨年,フランスの議会で,台湾の国際機構への加盟を支持する決議案がほぼ全会一致で通過したことに謝意を示した。特に5月に開催されたWHAで,ゲリオ上院議員が304名の上院議員と連名で世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長に対し,台湾のWHAの出席を強く支持する旨の書簡を書いたことに蔡総統は感謝の意を述べた。

 加えて,蔡総統は上下両院の親台派グループ代表などが相次いで訪台し,フランス議会が台湾重視の姿勢を示してくれたことは,台仏関係のさらなる発展に大きな意義があるとも述べた。

EUとのサプライチェーン強化にも期待

 2002年上半期,フランスはEU(欧州連合)理事会の議長国を担当し,2月に「欧州半導体法(European Chips Act)」が成立した。先端チップ技術に関して台湾と協力の意向があり,蔡総統はこれを支持するとした。

 また,6月2日,ベルギーのブリュッセルにて開催された「EU・台湾貿易投資対話(EU-Taiwan Trade and Investment Dialogue)」を大臣級対話にレベルを上げた。低炭素領域におけるカーボンニュートラル,再生可能エネルギーの開発などが世界的趨勢になり,フロート式洋上風力発電や電動自動車(EV)で不可欠な半導体の分野で,台仏間の協力が同分野の発展に不可欠であると述べた。

 蔡総統は,今年の初めに「ヨ―ロッパとのサプライチェーンの連結強化計画(強化歐洲鏈結計畫)」を提起し,台湾・EU間で投資協定締結を通じたサプライチェーンの強化に期待すると述べていた。

 前述した仏上院副議長で親台派グループ代表のアラン・リシャールが訪台団を引率した際,駐仏中国大使の盧沙野は恫喝を込めて台湾訪問阻止の手紙を書いた。この行動は逆の効果を呼び,フランス議会が台湾支持を決心するようになった。

国交なくても外国議員団の訪台は常態化

 本稿で詳細は述べていないが,5月3日から7日に衆議院議員で自民党青年局メンバーの小倉将信局長,鈴木憲和局長代理,鈴木隼人国際部長,山口晋副部長,西野太亮副部長の5名と日本青年会議所中島土会頭,星野健太常任理事などの幹部6名の計11名が訪台し,蔡英文総統と会見した。

 また,スロバキア国民議会のミラン・ラウレンチーク(Milan Laurenčík)副議長,議会親台派チーム代表のPeter Osuský,Anna Zemanova議員,Tomas Lehotsky議員,Miroslav Ziak議員,Andrej Stancik議員と同国ブラチスラバ県のJuraj Droba県知事,Malacky市のJuraj Riha市長,ブラチスラバ県のAndrea Urmanicova幹事長,Michaela Kunska副部長らの訪台団が,ゲリオ訪台団とほぼ同じ時期に蔡総統と会見した。

 中国は“一つの中国”の原則のもと,各国に台湾との国交断絶を強要したため,台湾は多くの国と国交が無く,また,国際機関から排除され,極めて不公平な待遇を強いられている。しかし,自由と民主主義の共通した価値観を有する国々から議員団の訪台は,既に常態化していると言える。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article2606.html)

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