世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1975
世界経済評論IMPACT No.1975

日本デジタル社会で考えるべきこと

三輪晴治

(エアノス・ジャパン 代表取締役)

2020.12.14

 1994年から日本政府は「電子政府」という名前で,「高度情報通信社会」の構築を目指して動いていた。2000年11月から「電子政府」プロジェクトを立ち上げ,2001年に森喜朗首相は「e-Japan戦略」を掲げ,「2006年に世界最先端のIT国家にする」として,各省庁で9千億円から1兆円規模の予算が毎年投じられたようである。今日でも「IT総合戦略室」があり,CIOという補佐官制度もある。しかし現在において殆どその成果は見えていない。

 デジタル化によりどんな国家にするかの具体的な絵が描けていない場合,その計画は実行できないし,計画が中途半端なものだと,デジタル化によりリストラされ,首になることを恐れて官僚,公務員は,いろいろ形でプロジェクトに反抗し,サボタージュする。1994年から政府がデジタル化の旗を振り,カネを投じたけれどもデジタル化が進まなかったのはそのためかもしれない。

何をしなければならないか

 民主的な政治体制には,憲法で保障された表現の自由を個人が主体的に行使し,市民として政治的な議論に参加する「公共圏」が必要不可欠である。異質な他者の意見に触れ,自らの「偏り」を省みながら,熟議を重ねる場がなければならない。このプロセスと社会環境により民主主義の基盤となる世論が形成されることになる。こうした環境を造らなければならない。

 こう見てくると現在のデジタル化のシステム機器では,それを製造し運用しているものはそのシステムの中を動く総てのデータ・情報を盗聴でき,加工もできる。しかも事実として機器生産者および運用者に国家が繋がっている。

 国は,自由民主主義をまもり,国防と経済安全保障にためには,デジタル化のシステム機器は自前のものを使い,自分で管理しなければならない。アメリカのものでも使えない。日本は,自国のシステム機器産業を育て,ソフトエンジニア,システムエンジニア,データサイエンティストを養成しなければならない。

 グーグルに頼るのではなく,データ情報の中立性を保つために「国立データバンク」の創設が必要である。つまり日本にも,独立機関として,アメリカ政府にもつながらない,ブリュースター・ケール氏の言う「インターネットアーカイブ」のような,「国立デジタルバンク」を創る必要がある。そして「分散化技術」,「ブロックチェーン技術」などによりデジタル社会のなかで自由民主主義を維持しなければならない。

 日本人はアメリカのグーグルの情報検索サイトで情報,知識を得て生活している。特に若者はグーグルで勉強し,育っている。しかしグーグルの検索サイトにはフェイクニュースやいろいろのプロバガンダが飛び回っている。外国から,日本人の考えを変え,洗脳するためのサイバー攻撃の火花が飛び交っている。日本は独自の「情報検索サイト」を持たなければならない。

日本デジタル社会の設計と国家戦略の策定

 これからの日本経済社会を,デフレから脱却させ,100年先をにらんで日本経済を再発展させることである。かつての池田内閣の「国民所得倍増計画」以上の,国家戦略として「国防」と「経済安全保障」の観点で「21世紀デジタル社会のシステムの構造」を描き,それを実行するための「戦略的実行計画」を策定しなければならない。そのシステム構造はリジッドなものではなく,モジュール的なアップデートができるものにする。それを計画する部隊として「経済企画省」と「国立シンクタンク」を創設する。

インフラの技術構築力

 半導体システム設計技術力(国による半導体設計インフラの整備)。5G 6G通信機器開発力(NTT,NEC,Fujitsu)。サイバー・セキュリティ技術力,分散化技術。ブロックチェーン技術。デジタル化だけではなくアナログという人間の要素を入れること。

構築すべきもの

 日本版情報検索システムとデータベースの確立。国立デジタル図書館の設立。日本のサバ―・クラウドシステム。センサー・ネットワークシステム。5G・6G高速通信インフラ建設。ソフトエンジニア,システムエンジニア,高速通信技術エンジニア,データサイエンティスト,セキュリティ・エンジニアの養成。

 これをもとに日本のデジタル・ビジネス商品を創造し,プラットフォーマーの胴元になる。

 これらをデジタル社会としてシステムを構築する上では,利権業者(レントシーカー)を入れてはならない。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1975.html)

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