世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
共産主義の妖怪がまた徘徊している
(エアノス・ジャパン 代表取締役)
2020.10.12
ソ連の崩壊
1987年ロシア革命70周年記念でミハイル・ゴルバチョフが「民主主義と平和」を強調し,「ペレストロイカ」(再構築)の加速を宣言した。1989年にベルリンの壁が崩壊した。1991年ゴルバチョフが「グラスノスチ」(情報公開)をしようとした途端に,「ソビエト社会主義共和連邦」は崩壊してしまった。
1992年フランシス・フクヤマは『歴史の終わり』という本を書いた。
フクヤマは「歴史はイデオロギー闘争であり,政治体制の興亡の変遷である。ソ連の崩壊によりイデオロギー闘争は終わり,「共産主義」も終わり,歴史も終わった」と言った。このころから「共産主義社会」の寿命は75年と言われ始めた。
ロシア革命
ロシアは日露戦争に負けて,経済は疲弊して,いろいろの暴動が起こっていたが,1906年5月に民族主義者のピヨートル・ストルイピン首相が,民主主義によるロシア国民のためのロシアにしようと改革をスタートした。農業改革により農奴を開放し,言論の自由を進めた。そして政府に対する革命勢力を鎮圧しようとした。しかし1911年9月ストルイピンはユダヤ人のスパイであったボグロフにより暗殺された。
1917年,スイスのチューリッヒに亡命していたウラジミール・レーニンは,『帝国主義論』を執筆しながら共産主義革命を起こそうと画策していた時,ユダヤ系国際金融資本をバックにしたユダヤの工作員グループが近寄り,資金を出すのでロシアで革命を起こせと言われた。そこでレーニンは用意してもらった「封印列車」でペテルブルグに行き,「ロシア革命」を起こした。マルクス主義に基づき「プロレタリアートによる共産主義国家」を造るという触れ込みをしたが,レーニンが実際にやったのは,テロリストとして武装蜂起して,ロシアを乗っ取ったのである。反対するロシア人の地主や農民400万人以上を虐殺して,ロシア皇帝を倒して,1917年「10月革命」により,ロシア共産党独裁国家を作った。ロシア革命として一般に理解されている「ロシアの民衆が蜂起して革命を起こし,皇帝を倒し共産主義国家を作った」というのではなかった。
カール・マルクスの考え
マルクスは,19世紀のイギリスの資本主義経済社会の状態を分析して,『資本論』,『共産党宣言』,『経済学批判要綱』等の膨大な著作を残した。マルクスの分析による資本主義経済社会はこうであった。資本主義経済構造のもつ矛盾の中で,資本家は労働者の搾取により利益を上げながら経済活動を拡大するが,失業,格差,貧困,腐敗を社会にもたらす。飽くなき利益を追求するために資本家はグローバルな競争を展開するが,「資本の有機的構成の高度化」による「利潤率の低下」が進み,そのために労働者の搾取を更に強めて,資本主義経済社会は最終的に衰退する。その中で育ってきた団結した労働者が革命を起こし,資本家を倒し,「資本主義的私有の最期を告げる鐘が鳴る。収奪者が収奪される」(「資本論」)。そして「労働者のための豊かな共産主義社会」ができる。これは歴史的必然であり,資本主義経済社会の宿命であるとした。マルクスは,共産主義革命は資本主義経済の最も進んだ国で起こるものだとし,資本主義社会から社会主義社会そして共産主義社会と進むことは歴史的必然であると言った。共産主義社会では,生産手段を国家が所有し,「計画経済」で生産と消費を進める。人民は能力に応じて働き,欲望に応じて消費する社会になるとした。恐慌も不況も起こらない,資本家と労働者の階級闘争もない社会であると言った。
しかし最初に現れたレーニンによる「ロシア共産主義革命」は,資本主義経済が発達していない,工場制製造業の労働者が存在しない,ロシア皇帝の下での農奴による農業国で起こった。労働者が起こした革命ではなかった。レーニンの率いるテロ革命グループがロシア皇帝を倒し,ロシアを乗っ取り,人民を奴隷のように使う全体主義の「共産党の独裁社会」になった。
マルクスはこのような共産主義社会は考えていなかったが,マルクスの描いた「豊かな共産主義社会」はまだこの世に実現していない。プーチンは,2013年に「ユダヤ人により支配されたソ連共産主義が終わったことに感謝している」と言っていた。
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