世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1643
世界経済評論IMPACT No.1643

支店レスで不動産業を展開:金融企業の再生戦略

吉原英樹

(神戸大学 名誉教授)

2020.03.02

金融企業は構造不況企業

 銀行など金融企業は構造不況企業になってしまったようだ。業績は長期低迷であり,トンネルの先が見えない。優秀な人材がやめていく。就職先人気が落ち込んでいる。株価は低迷している。

 金融企業の環境に大きな変化が生じている。低金利・マイナス金利,フィンテック,クラウド融資,暗号通貨(ビットコインなど),非金融企業の参入などだ。金融企業の内部をみると,高給取りの中高年社員が多く,恵まれた処遇がつづいている。

 大きな変化には,漸進的対応(小手先の対応や従来路線の延長)でなく,抜本的変革が必要だ。困難な対策,自社に不利なこと,評判の悪い対策でも実行する。奇策と思えることでも実行する。業界の慣行を破る。外国,他業界など業界の外に答えのヒントをさがす。

 シティグループの再生戦略が評価されている(日本経済新聞,2020年1月24日)。旧日興コーディアル証券とシティのリテール銀行の売却などである。

生活実感では支店の必要性は低い

 三井住友銀行の北須磨支店に,現金の引き出し,年金の受領,納税などのためにときどき行く。利息はゼロに近いが,現金を自宅においておくのは不安であるので,口座に入れている。口座に入れておくと,紛失や盗難が防げるから安心である。そのための費用はゼロである。この点について,「口座を持つだけで手数料を取る欧米の仕組みをいまさら導入するのは難しい」(日本経済新聞,2017年10月24日)とのことである。

 支店の貸金庫に土地の登記簿などを保管している。貸金庫の料金は年間18150円であり,駅などのロッカーの料金が1日300円から500円ほどだから,安い。年金の一部をゆうちょ銀行の口座に振り込む(移転)ために,支店に行くこともある。近くのゆうちょ銀行の支店にはときどき行く。切手やレターパックなどを買うためであり,ついでにATMを利用する。

 2005年,神戸大学を定年退職して,南山大学(名古屋にある)に就職した。退職金の一部で地元名古屋のトヨタ自動車の株を記念に買う。以後こんにちまで野村證券の天王寺支店に行ったのは14年間に一度だけである。いまの担当者は,ふたりめで,会ったことがない。電話(固定電話)での対応のみである。証券会社の支店は必要なのだろうか。新聞や雑誌によると,大手の銀行や証券会社は支店を3割削減(7割は残す)するとのことだが,わたくしの生活実感からは,最低でも,7割減らして,残すのは3割でよいのではないか。なお,日本の銀行などの店舗数は先進国で突出している(日本経済新聞,2017年10月24日)。

支店レスをチャンスに不動産業に参入

 支店は一等地に立地しているから,不動産価値が高い。現状は,土日祭日は休業で,平日も9時〜15時しか開いていないから,周囲にマイナスの影響をおよぼしている。みずから単独で,あるいは不動産企業と共同で,不動産業に進出して,眠っている不動産価値を目覚めさせるべきである。

 本店を東京などの都心から地方の辺境にうつす。そして,コスト低減に努力する。インデックス投信のバンガードが参考例になろう(日経ビジネス,2019年2月4日号,20ページ)。

 顧客にきてもらう支店は都心の便利なところに置くが,スターバックスやマクドナルドに同居させてもらう。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1643.html)

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