世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1547

産業技術政策を刷新し日本再興を

三輪晴治

((株)エアノス・ジャパン 代表取締役)

2019.11.18

日本イノベーション推進本部の設立

 資本主義経済の発展はイノベーションを通じて起こるものである。しかし日本ではデフレに突入して以来,イノベーション活動が衰退した。日本の強みであった家電産業は安い労働をベースにしたアジア企業の安い商品とまともに戦ったために敗れた。しかし世界全体で見ると,家電産業にはアメリカ,ヨーロッパのワールプール,ダイソン,アイロボット,エイオースミスなどが,AI,IoTなどを駆使したイノベーションで付加価値高い商品を開発して大活躍している。全ての経済政策はイノベーションを助け,促進させるものでなければならない。

 AI,IoT,センサー,ナノマテリアルなどで,現在の停滞した日本産業を,イノベーションで刷新し,付加価値の高い商品で蘇らせる必要がある。特に日本は先端素材産業は強い。更にこの分野の開発を進めなければならない。今度の韓国への輸出管理紛争でも,日本の素材産業技術は高いレベルのものであることが分かった。しかし同時に分かったことは,日本はその先端素材を安売りし過ぎてきたことだ。その価値を正当な価格で売らなければならない。

 日本の中小企業のイノベーションが衰え,生産性が低下している。異次元の金融緩和で衰退商品にしがみつき,ゾンビ企業になっている。かつて日本生産性本部や日科技連が中心になり,品質管理技術を駆使して品質と改善による生産性向上を進め,日本産業が世界のトップになったように,ここで「日本イノベーション推進本部」を創り,AI,IoT,センサー,ナノマテリアルなどを駆使して日本産業全体のイノベーションを促進しなければならない。そして大学の研究力を阻むような国立大学の「独立行政法人制度」を廃止することである。

情報・通信インフラ安全保障

 IT・デジタル社会になりインターネットの通信機器は今日の社会経済インフラの根幹となっている。生産されたメモリーのビット数は過去50年にわたり,対数軸で一直線で伸び,今でも伸び続けている。世界のデータ流通量は飛躍的に増えており,1984年と比べると2017年は71億倍になっている。現代のデジタル社会は情報・データの流れの上に成り立ち,今やこの通信インフラが5G,6Gの世界になっている。この通信インフラに障害を起こると社会は大混乱を起こす。最近はテロや外国からの通信インフラに攻撃を受けることがある。インターネットは元来通信障害や外からの攻撃に強いものとして開発されたものであるが,それでも障害や外からの攻撃があると大混乱する。

 この通信インフラとしての5Gシステムを中国のファーウェイが開発し,世界に供給しようとしてきた。しかしアメリカのトランプはこれを採用しないとして,ファーウェイ社を叩き始めている。トランプの言うように,通信機器インフラのこれからの根幹技術である5G装置は自分でコントロールできる自前のものでなければならない。

 通信機器は技術の内容から,その通信機器を通過する通話,データは通信機器を所有している者が盗聴できるし,送電されたデータは取得できる。これまでの固定電話でも盗聴はできたし,通信機器を所有し,管理しているところは盗聴できる。トランプは中国のファーウェイの通信機器はアメリカに設置したものでも中国のファーウェイが盗聴する仕組みがある筈として,それを使わないように他国にも強要している。つまりこうした通信機器は自分の国で管理できるものにしなければならない。日本も自分で情報知識社会の基礎になる強力なサイバーセキュリティシステムを持った情報通信システムの5G,6Gの技術の開発をして,使用しなければならない。

情報知識検索プラットホームの安全保障

 現在日本国民は,アメリカのグーグルの検索ネット上の知識・情報で学習し,行動している。特に日本の若者はそうした検索ネットのなかでスマートフォンの情報と知識で育っており,自分の頭で考えることをしなくなっている。しかしフェイスブックやSNS(交流サイト)では偽情報が出まわり,国家ぐるみの世論操作が行われている実態が明らかになっている。組織的な情報操作が行われた国は70カ国にのぼり,2年前の28カ国から大幅に増えている。また権威主義的な体制では人民の監視を通じ情報をコントロールし,国民大衆をコントロールしようとしている。これはミサイル攻撃よりも怖いものである。中国はある目的で,アメリカのグーグルとは別の自前の情報検索プラットホームを持っており,しかもその情報検索システムで,他国をも監視しようとしている。中国は政府にとって気に入らないネット上の情報に介入する権利があると正式に表明しており,外国にたいしてもいろいろの干渉をしている。

 日本は,「ファクトチェック」を含めて,グーグルを越えるタクソノミー(知識の構造的紐づけ)をベースにした日本独自の情報・知識検索サイトを創る必要がある。

資本主義経済活動の制御装置の確立

 資本主義経済活動では必ず詐欺的行為が出てくる。その詐欺的行為の中には「本当の詐欺」と「詐欺に見えるが本当のイノベーション」があり,これを峻別する能力と仕組みが必要である。アメリカは1929年の大恐慌の中でうごめいた詐欺的行為を摘発し,取り除く仕組みを作り上げている。それは「ペコラ委員会レポート」という判例資料とそのエグゼキューションという「実行機構組織」である。日本はこれを自分なりに創り上げなければならない。最近アメリカは,ISD(Investor State Dispute)などで,他国に対していろいろの理由をつけて賠償金を課すことが多い。トヨタもタカタ工業もアメリカに難癖を付けられ膨大な金を巻き上げられた。これに対抗するためにも日本はペコラ委員会レポート判例を身に着け,外国からの詐欺的な行為,不正な行為を司法的にも排除することのできる仕組みを確立する必要がある。

国家シンクタンクの設立

 現在日本には世界の政治経済を分析し,日本全体の戦略,経済政策を策定する機関がない。2001年まであった「経済企画庁」をアメリカにより解体させられた。適切な国としての経済政策を創り上げるために国家シンクタンクとしての情報取集を含めた「経済企画省」を創る必要がある。

 日本経済は今危機的な状態にある。10月1日に消費税を引き上げた。消費税は国民に消費することに対してペナルティを課すことであり,これにより消費の低下が起こる。必ずやってくる東京五輪後の需要後退,米中貿易戦争の悪影響,中国経済の崩壊の悪影響,EU経済の失速,中東の石油紛争の影響などで,リーマン級の世界的な金融崩壊の可能性がある。このままでは日本経済は大変なことになる。

 これに先手を打ち,日本経済の再発展のために,以上指摘したような「有効な経済政策」をつくり,それを迅速に実行しなければならない。そうすればデフレから脱却でき,経済は再発展することになる。国民が豊かにならなければ経済は成長しないし,国力も強化できない。

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