世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1466
世界経済評論IMPACT No.1466

ポスト・グローバル化社会の枠組み

三輪晴治

(エアノス・ジャパン 代表取締役)

2019.09.02

ポスト・グローバル化の波

 2018年9月25日,アメリカのトランプ大統領は,国連総会で演説し,「私たちはグローバリズムの思想を拒絶し,愛国主義を信奉する」と宣言した。1980年頃からアメリカが仕掛けたグローバル化が進み,それが行き過ぎてしまい,どの国家も,企業も,そして国民大衆も経済的に疲弊してきた。これでアメリカ自身の経済的覇権の座も怪しくなってきた。儲かったのは多国籍金融資本と多国籍産業資本だけであり,多国籍資本はあまり税金を払わない。ブリュッセルのEU本部はグローバル化を進めて,金,モノ,人を自由に移動させて,経済的に国家間の格差を作った。各国に移民を受け入れさせて,多くの国で生活や文化が分断され,破壊され,「西洋の自死」とまで言われている状態になっている。EUの中で一人勝ちであったドイツも経済がおかしくなってきている。資本主義経済は,本来「不均等発展」で,グローバル化によりいろいろの分野で格差,分断が広がる。

 こうした中で,世界のあちこちで,グローバル化の行き過ぎを是正すべきだという声があがり,民衆による国のリーダーに対するレジスタンスが,アメリカ,イギリス,フランス,ドイツなどで起こってきている。中国の共産党政府は自国では保護主義を貫いていながら,外に向かって一帯一路などでグローバル化を進めているが,そのために中国自身の中でいろいろの矛盾が噴き出してきている。

グローバル化とポスト・グローバル化

 「グローバル化」と「ポスト・グローバル化」は,つまり「新自由主義」と「国民国家主義」は,近代の資本主義経済の歴史のなかでは,それが交互に起こっているのが分かる。具体的には,経済の回復・発展,それから「ハイパー・グローバル化」と呼ばれるようなグローバル化の行き過ぎで経済の熱狂的なブームが起こり,それが弾けて恐慌となり,長期経済停滞がやってくる。これが交互に起こるのは,この「資本主義経済の景気変動」による。短期的景気変動は10年から15年のサイクルで起こり,覇権国のシフトのような構造的経済変動は50年から60年のサイクルで起こる。こうした変動が起こるのは,人間の本性としての「強欲さ」による。恐慌は,経済の過熱で膨れ上がった生産能力の過剰,金融資本の過剰を清算・破棄するプロセスである。グローバル化による経済の過熱,「根拠なき熱狂」は,より多く儲けたいという人間の強欲によりもたらされ,やがてそれは大恐慌を起こし,大不況に追い込む。これにより多くの国民大衆が財産を失い,貧困に追いやられて,人々は「根拠なき熱狂」に酔いしれてはならないとその時は思うが,また経済活動が活発になると,その自覚を忘れ去り,経済の根拠なき熱狂に走る。これは人間の持つ強欲がある限り続くのであろう。

 これまでの歴史の中での覇権国の動きを見ても,このことが見られる。新しく覇権国の座に着いた国は,その覇権の座の前半は,真面目にイノベーションにより新しい産業を創造して,その国民国家の経済を拡大発展させ,圧倒的な経済力により世界のリーダーになるが,後半になるとグローバル化に走り出し,自国の産業から力を抜き,植民地を作りながら,他国の富を収奪するようになる。

企業も「株主第一主義」になり,労働者の賃金を下げ,社会環境を悪化させ,国民を貧困化に追いやり,資本だけがバブルを起こして儲けるが,やがて恐慌,大不況をもたらし,新しく産業を興して発展してくる新興国に覇権の座を譲ることになる。覇権国としてのオランダ,イギリス,アメリカがそうであった。

 経済学も,グローバル時代に入ると,経済学,経済政策もその根底にある「道徳,倫理,哲学」が抜き取られ,数字でドライブされるようになる。「国家主権」,「民主主義」,「グローバル化」はトリレンマで,全部を追求することはできないことがこれまでの資本主義経済社会の歴史で分かってきた。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1466.html)

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