世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1337
世界経済評論IMPACT No.1337

中国本土企業の発展と日本

真田幸光

(愛知淑徳大学ビジネス学部 教授)

2019.04.15

 筆者は,中国本土の企業は今,一般的に言えば,「約14億人の国内市場が成熟しておらず,消費サイドに,消費財が行き渡っていない,インフラ開発が完全ではないことなどから起きる,明らかに強い需要が存在しており,この需要さえ,しっかりと掴めば,先ずは内需によって,規模の経済性をエンジョイしつつ,企業発展の基盤をきちんと確立することが出来る」と考えている。

 そしてまた,こうしたことを具現化し,経営基盤を確立しつつ,グローバル展開に臨み,グローバル化の潮流にうまく乗れれば,「短期間に世界的な大企業にのし上がることも可能である」と見ており,更にまた,ここで,国際金融市場にアクセス,世界的な資本市場の仕組みに企業発展の軌道を乗せることが出来ると,「国際基準で見た株価の拡大に伴う時価総額の増大にも成功することが出来,グローバルビジネス社会に於いて,実体経済はもとより,金融経済に於いても,一躍トップクラスの座に上り詰めることが,可能となる」とも考えている。

 更に,我々,自由主義経済陣営の民間企業にとって,こうした発展をする中国本土企業のタチの悪いことは,「中国本土政府は,社会主義,共産主義体制国家として,こうしたグローバルに活躍する中国本土企業を中国本土政府が支援して発展させるという,所謂,ダブルスタンダードを持って育成していると見られること」にあり,このまま,中国本土企業の発展を許せば,世界の中核企業の中に占める中国本土企業の比率は更に高まることとなろう。

 そして,筆者の見るところ,上述したような中国本土企業の典型の一つが,「ファーウェイ=華為」ではないかと見ている。

 ここで,公開資料を引用しつつ,筆者のコメントも加え,ファーウェイを眺めてみると,

 「ファーウェイは,中国本土政府が改革開放路線を本格的に推進する前の1987年に携帯電話のインフラ整備に必要な通信機器を開発するベンダーとして中国本土・深圳に設立された,世界有数のICTソリューション・プロバイダーとなっている。

 SIMフリースマートフォンなど,端末を手がけるまでに急成長を遂げている。

 起業当初のファーウェイの顧客は中国電信,中国移動,中国網通,中国聯通などの中国本土企業が中心であったが,中国本土自身のグローバル化が進む中,中国本土政府の戦略の下,ファーウェイ自身もグローバル化路線をいち早く展開し,2000年代以降はブリティッシュ・テレコム,ドイツテレコム,テレフォニカ,テリア・ソネラ,アドバンスト・インフォ・サービス,シンガポール・テレコムなどのヨーロッパや東南アジアの大企業向け事業も大きく伸長しており,通信関連機器のシェアはエリクソンに次ぐ世界2位の規模となっている(モバイル・ブロードバンド製品,モバイル・ソフトスイッチ,パケットコア製品,光ネットワーク製品では世界シェア1位)。

 ファーウェイは300近い通信事業者に製品・ソリューションを提供しており,世界トップ50事業者のうち45社がファーウェイの製品・ソリューションを使用している。

 また,毎年,売上高の10%以上を継続して研究開発に投資するなど,先端技術開発への投資が旺盛な企業となっているが,こうしたことは,業績の良さを背景に,『中国本土政府のグローバル通信戦略』の実際の執行人の一つとしての活動とも見られ,こうした背景もあり,2015年時点で見ると,全従業員数の45%の従業員がR&Dに従事,2015年のR&Dへの投資額は合計596億700万人民元に達しており,これは,売上高全体の15.1%に当たり,過去10年間のR&Dへの投資額は,累計で2,400億人民元を超えるに至っている。

 また,2008年に初めて国際特許出願件数世界1位になると,その後は5位以内をキープし続けている。

 一方,経営面を見ると,CEO3人が『輪番制』を取っていて,半年でCEOを変えていく,常に進取の精神を求める経営体制となり,更に『社員持株制度』があり,10数万人いる社員のうち8万人が持ち株を持っているため,利益が上がると社員の給料も一気に上がるというグローバル金融機関などが取る仕組みを取り入れるような制度も組み入れている」。

 以上のことなどから,上述した筆者の定義に当てはまる企業の一つと見ている。

 但し,一点,筆者の上記の定義の中で異なる点は,「通信分野は軍事にも直結する重要分野であり,経営が外資に犯されると,中国本土自身のリスクに陥る可能性もあることから,中国本土政府の意向も含めて,戦略的には,敢えて非上場を貫いている」という点である。

 しかし,むしろこうした国粋主義?! を貫いていることもあって,社員の結束が強いと言う副産物も生んでいるようである。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1337.html)

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