世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
混沌が深まるばかり⁈の世界情勢
(嘉悦大学 副学長・愛知淑徳大学 名誉教授)
2024.12.30
筆者は現状の世界を,「混沌(Chaos)の状態である。」と見ている。
即ち,「先行きが見通せぬ,予測しにくい時代になっている」と認識しており,特にSNSの社会にみられるフェイク・ニュースの増加など,「疑心暗鬼」という心のウイルスが拡大する中,今後,何をどうするか分からぬと言われている米国のトランプ次期政権の登場によって,更に,「世界の混沌は深まる。」とまで言われており,懸念は強まっている。
情勢が良くなるにつけ,悪くなるにつけ,一定の予測が可能となれば,不安感も「限定的」となろう。がしかし,予測がつかぬ現在,人々の不安は増すばかりである。
そして,そのトレンドは,「混乱・Dis-Order・秩序の崩壊」に向かっているものと思われ,「現行の世界秩序」が根底から崩れる危険性はある。
即ち,「米英の秩序」から「中国本土の秩序」や「イスラム世界台頭」の可能性もあろう。
或いは,米国のトランプ次期大統領の,「全く新しい秩序の構築の動き」も出てくるかもしれない。
更に,こうした秩序の再構築の過渡期にあって,世界は「無政府状態 Anarchy」即ち,地域紛争や世界全体を巻き込む大戦争になる危険性も出てきている。
こうして,2025年の世界は,「混沌が深まるのか,混沌が落ち着き,一定の秩序に戻るのか」が大きく注目される年となっている。
そして今,マーケットの潮目が変わるのではないかとの見方も広がっている。
ハマス,ヒズボラのリーダーが相次いでイスラエルによって殺害され,しかもハマスのリーダーは,こともあろうにイランで殺害されたことから,メンツを潰されたイランがイスラエルに対する報復を示唆,これにより,中東情勢が大混乱する。
よって,原油価格は不安定な推移を続ける,その結果,世界的なインフレは払拭出来ず,不透明な状況が続く。そうなると,日本は追加利上げを簡単には出来なくなる一方,米国は利下げを思ったように展開出来ないとの見方がマーケットに残っている限り,国際金融市場は安定化しない。
この結果,日本は株価を何とか支えているものの輸入インフレの悪影響は払拭出来ない。
米国は利下げ出来ないことから高金利が続き,地銀を中心とした不良債権問題が顕在化,これが,新サブプライム・ローン問題に繋がるのではないか,との見方となる。
借金をさせて消費をさせ,生産拡大も誘導すると言う,米国経済のアキレス腱が垣間見られる。米国経済は本当に大丈夫か? よって,トランプ政権は,世界的インフレの根源となっているウクライナ紛争とガザ紛争を早期に休戦に持っていこうとしていると見られる。
ところが,シリアのアサド政権を支えてきたヒズボラが,上述したリーダーが殺害されたことによって,シリアでの戦線を縮小,同じく,シリアに駐屯しアサド政権を支えてきていたロシア軍もアサド政権を守り切れず,イランもライシ大統領の事故死以降の水面下の混乱もあり,シリアに対するコミットが弱まる中,反アサド勢力が僅か10日あまりでダマスカスまで攻め上がり,アサド大統領を追放したことから,中東情勢は再び揺れる危険性を孕み始めた。
そして,この混乱の中,イスラエルのネタニヤフ首相は,ヨルダン西岸やガザからパレスチナ人を完全に駆逐出来ないかと検討し始めているとの見方が出,これにより,一層,中東情勢は混乱,その結果,原油価格は上昇,世界的インフレ懸念も続き,世界の混沌の深まりも続く危険性が出ているのではないかとの悲観的な見方も出始め,「混沌の収束」に向けた動きはなかなか加速しない。
やはり,2025年は混沌の中からスタートしそうである。
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