世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
世界的に見られる人手不足問題
(愛知淑徳大学ビジネス学部ビジネス研究科 教授)
2024.07.01
最近は,主要先進国はもとより中進国の中でも,「人手不足」が顕在化しており,人口が14億人を超える中国本土でさえも人手不足となっていると報告されている。
実際に頭数が足りないと言うだけでなく,「求職者と仕事の内容とのミスマッチ」と言ったものが人手不足の背景となっているケースもあり,働き手の働く意欲を留めてしまう税制の問題も背景にあるとの指摘も聞く。
こうした中,筆者は,今,人類がすべきことは「機械が出来る仕事は機械に任せる」「人は人しか出来ない仕事を中心的に行う」「一方,機械が行うよりも人が行った方が良いと思う仕事については,コスト対比の需要さえ合えば,その仕事は人に任せる。但し,ここでは需給関係が反映され,基本的には,それなりの賃金をその仕事をしてくれる人に対価として支払う」「その上で,どうしても人しか出来ない仕事に対しては,高い対価を支払うことを覚悟して,人にやってもらう」「こうした体制を推進するべく,産官学金融が,ヒト・もの・金・情報を集中して,機械化,自動化,省力化に向けた研究開発支援とその実用化サポートを推進する」、といったことを前提として産業社会発展に努めるべきと考えている。
そして,このような変革を通して,「産業の効率性を高めつつ,SDG’sの具現化に努めていくべきである」とも考えている。
こうした考え方をしていることから,人手が足りないからと言って,安易に移民を受け入れたり,外国人労働者などを安い労働力として受け入れることを最大の目当てとして一時的に受け入れたりすることも反対である。今のような形で外国人労働力受け入れを続けていれば,「搾取」と言われてしまうリスクもあることから,どうしても受け入れるのであれば,移民や外国人労働者に対して,それなりの対価を払わなくてはならないであろうし,また,それだけの対価を払うのであれば,「私がやる」と自国民から人がシフトしてくる可能性も出てこよう。また,もとより,円安になると,外国人労働者自体が日本に来なくなる可能性もある。
このように,筆者は考えているが,しかし,移民問題などで失敗しているとも言われているドイツでさえも最近,外国人労働者の受け入れには前向きに転じている。
「ドイツの移民法は,第三国(EU域外)出身の専門人材の受入促進を目的としている。
連邦労働社会省によると,同法のもとで2020年3月1日から12月31日までに,計3万のビザが発給された。コロナ禍にも拘わらず,同制度の活用が進んでいることが明らかになった。2012年導入のブルーカードとは第三国出身者を対象とした既存制度としては,大卒以上の高度人材の受入促進策であるブルーカルテ(Blaue Karte)がある。ブルーカルテは,2012年から導入されている滞在・就労許可制度で,長期的な人口減少に伴って不足が懸念される高度人材を,第三国から積極的に受け入れて補うことを目的としている。
アメリカのグリーンカードを模しており,ブルーカルテと呼ばれている。ブルーカルテによる就労に際して,連邦雇用エージェンシーの同意は不要である。また,有効期間は最大4年だが,雇用契約期間が4年に満たない場合は,契約期間に3カ月を加えた滞在が認められる。雇用期間が33カ月継続するなど一定の条件を満たすと,定住許可の申請が可能であるが,十分なドイツ語能力を有する場合は,ブルーカルテ取得から21カ月後に定住許可を取得出来る。尚,受入要件には,大学卒業資格のほか,年収要件(毎年変更)等も設けられている。2021年は,年収5万6,800ユーロ以上の具体的な雇用先がある場合で,初回の滞在許可は最長4年まで認められる。そして,カナダのようなポイント制も導入されることとなった」と報告されている。ドイツでも人手不足に対応する為,外国人労働者の受け入れを改めて,更に拡大しようとしているようである。
筆者にはあまり納得のいく対応策ではないが,こうした動きが強まっていることも事実である。世界はどのような方向に向かうのか,フォローしたい。
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