世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1316

日本は優秀な人材の海外流出を阻止できるか?

吉川圭一

(Global Issues Institute CEO)

2019.03.25

 表題の件に関して考えて見たいと思う。しかし私は経済が専門家ではないので,そこで私独自のAKB論として論じてみたい。

 最近のAKBでは,女性同士のライバル抗争に破れた人は,AKBはおろか日本の社会から出て行かねばならない。去年の選挙に負けた宮脇咲良,3代目総監督指名競争に破れた高橋朱里。そういった比較的選挙の順位の高い人が—である。いかに今のAKBが組織内ゼロサム化しているかだろう。1970年代半ば以降の日本の企業と同じである。

 それと本人達にとって納得の行く人事でなかったのかも知れない。2018年の選挙の開票イベントが名古屋で行われなければ,宮脇が勝っていた可能性は高いが,名古屋で開票イベントが行われた理由に明確な説明はない。3代目総監督に内々定していた高橋がなれなかった理由にも明確な説明はない。

 これは日本の企業で良くみられる現象であり,いわば日本の宿痾である。そこで彼女達は日本を出て行くことにしたのかも知れない。

 日本を出て行って,どこへ行くのか? 韓国—つまりK-POPである。

 これは2018年夏にAKBとK-POPのジョイント企画が行われたことの影響が大きい。宮脇も高橋も,K-POPを足掛かりに世界的スターになることで,逆転劇を演じようとしている。

 逆に見るならAKBないし日本の芸能界にいても,世界的—というか欧米で大スターになることが,特に日本式アイドルの人には難しい。それは源氏物語以来の“未完成の美を愛する”日本文化と,“産めよ増やせよ大地に満ちよ”という聖書の教えの影響が強い欧米との文化の違いが大きい。

 さらに逆に見ればK-POPは,欧米式の“完成された美”を意識している。彼女達の日本式アイドルと違う優れたダンスに触れて,非常な良い刺激を受けたと宮脇も高橋も言っている。それが彼女達が韓国行きを決めた理由の一つだった。

 実は同じような現象が日本の普通の企業でも起こっている。自動車や家電業界に詳しい友人によると,もう90年代から,日本の企業に勤めていた優秀な技術者が,韓国の自動車や家電の会社に引き抜かれる現象は良く起こっていた。

 確かに数年で使い捨てにされた人は多い。宮脇や高橋に関しても,それは心配されている。

 しかし韓国企業に引き抜かれて数年で使い捨てにされたように見える日本人の中にも,その数年で残りの人生が困らない高給を貰って日本に戻って来た人も少なくはない。

 これは欧米—特に米国標準の生き方である。K-POPが欧米標準のダンスを行うことと同じである。

 日本は明らかに国としては経済面で韓国に競り負け始めている。前述の自動車,家電業界に詳しい友人によれば,価格,性能,デザインどれを取ってみても,韓国製のものが日本製のものを凌駕しつつある。それは技術者の引き抜き等による性能等の問題だけではない。

 韓国製だけではない。世界中どこの国の自動車や家電メーカーの製品でも,そのデザインに強い自己主張がある。気に入った人だけが買ってくれれば良い。気に入らない人には買ってもらえなくて良い。そういう信念が滲み出ている。

 日本製品には,それが少ない。30年に渡って不況が続いたせいか,できるだけ大勢の消費者に悪い印象は持たれない,逆に言うと無難で無個性な製品が日本の自動車や家電には増えた。それが韓国にまで競り負けて来た大きな理由だ。

 これは非常に重要な問題だ。つまり韓国ないし欧米諸国等を,そのまま真似しても,日本は勝てない。日本が強い自己主張を持って初めて,同格以上の競争が出来る。

 それには,どうしたら良いか? そこで話は堂々巡りになる。

 日本人が強い自己主張をするには,日本人が自信を回復しなければならない。そのためには国や企業は,部分的にでも欧米や韓国を見習って,活力を取り戻さなければならない。

 本人の業績等に基づいた社内的に格差の大きい給与体系や人事査定の透明性確保。それらは今後の日本企業にとって,非常に重要になる。

 だが,それだけで良いのだろうか? 日本が他国の真似をするだけで独自性を忘れたら,そのような日本(企業)から強い自己主張が出て来るだろうか? 日本が守らなければならない独自性は,守らなければいけないのではないか?

 AKBを例にとれば,20歳過ぎたメンバーの中の希望者に,徹底したダンスの再トレーニングを行い,K-POPの力を借りなくても,欧米進出できるようにする等の方法が考えられる。普通の会社だったら,欧米標準の給与体系や人事査定の中にいる人と,今までの日本企業の給与体系や人事査定の中にいる人とが,同じ会社にいるようなシステムだろう。

 こうすることで従来型のグループの中にある日本独自のものが,欧米標準グループに反映されて,世界に通用するが日本独自のものが,できるのではないか? 社内に強い緊張が発生するかも知れない。しかし,その緊張も,世界に通用する日本独自のものを作り出すためのインセンティブになるかも知れない。

 そのような緊張を良い方向へのインセンティブにするようなマネジメントは,非常に難しい。それをやり遂げることが出来るかどうか?そこに今後の日本の,生き残りがかかっていると言っても過言ではない。

関連記事

吉川圭一

国際ビジネス

国内

日本

最新のコラム