世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1241
世界経済評論IMPACT No.1241

ミャンマー小売業にみる外資規制緩和による新たな展開

川島 哲

(金沢星稜大学経済学部 教授)

2019.01.07

 ミャンマーの小売業や卸売業に関していかなる動きがみられるか。

 ミャンマー商業省は2018年5月11日,小売業や卸売業に対して外資の投資を認める通達(No.25/2018)を公表した。一定額を超える投資を条件に外資100%の投資を容認する。その条件とは,小売業の投資においては,外資比率が80%超の場合は300万ドル,80%以下の場合は70万ドルを要求する。店舗面積が929平方メートル以下のコンビニなどは認めない方針である。また,卸売業に関しては,外資比率80%超で500万ドル,80%以下では200万ドルが条件となる(注1)。

 また,ティラワ経済特区(SEZ)においては条件付きで貿易業が認められている。

 商業省は本通達の目的として,小売・卸売業界の競争を促し,価格の安定や商品の選択肢を増やすこと,流通事業におけるサービスの質の向上,公正な競争の確保,中小企業の発展,外資の誘致,ミャンマー人の雇用の確保を挙げている。

 同通達では,外資の出資比率と初期投資額の関係についても規定している。同規定では初期投資額は販売用商品の金額で,土地の賃貸料を含まないとする。また,現地調達したもののほか,輸入品についても販売可能で,いずれの州,管区のタウンシップでも事業を行うことが可能である(注2)。

 次に卸・小売りの外資開放に向けた動きが加速している。

 ミャンマー商業省は2018年7月26日,卸・小売り分野の外資開放に関する「優先品目リスト」を公表,7月30日には認可に向けた具体的な手続きを定めた「Standard Operation Procedure」に関する説明会を開催するなど,外資開放の動きを加速させている。5月に公布した同省通達(2018年5月22日記事参照)により,一定条件の下で卸・小売り分野における100%外資の投資が認められたが,その後,国内企業からの反発を受けて規制の再強化を検討する動きもあり,動向が注目されていた。

 「優先品目リスト」は,100%外資企業でも取り扱い可能な品目として,日用品や電化製品など24品目を規定している(注3)。

 現実的な例として,ミャンマー小売・卸売業登録 イオン,ユニ・チャーム第1号をあげたい。

 ミャンマー政府が2018年5月に小売・卸売業の外資規制を緩和したのを受け,商業省は,イオンとユニ・チャームに小売・卸売業の登録を完了したと公表した。これにより,ミャンマー国内の自社製品の輸入販売が可能となった。従来の外資規制においては,国内で生産された製品は卸売が認められていたが,輸入品の販売はできなかった。

 卸売業においては,外資比率が80%超の場合は500万ドル,それ以下の場合は200万ドル以上が条件となっている(注4)。

 これら日系企業を中心として進出がみられる背景には,中間層の勃興がみられる。

 今後公表される「Standard Operation Procedure」に規定をはじめとして今後もこれらについて注視していくことが重要となる。

[注]
  • (1)『日本経済新聞』2018年5月12日。
  • (2)日本貿易振興機構2018年5月22日「ビジネス短信」,2018年12月26日アクセス。
  • (3)日本貿易振興機構2018年8月6日「ビジネス短信」,2018年12月26日アクセス。
  • (4)「日本経済新聞」2018年10月19日。
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1241.html)

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