世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1094

東南アジアのインフラ面の整備及びASEAN首脳構想

川島 哲

(金沢星稜大学経済学部 教授)

2018.06.11

 本稿では東南アジア共通の課題となっているインフラにおいて,いかに外資が関わっているか,そして国内産業育成のためにいかに外資導入の制度が変わってきているかについて考察してみたい。

 東南アジアでは地下鉄などの鉄道建設が近年急ピッチで行われている。

 その背景には,大都市を中心に深刻な交通渋滞が慢性化している現状がある。

 例えばマニラの渋滞による経済損失は(JICAの試算),1日24億ペソ(約54億円),2030年に60億ペソ(約135億円)に増加する。

 第二に,海外企業の投資誘致で域内主要国に優位に立つという戦略である。

 世界の工場と呼ばれた中国から製造業が東南アジア,特にベトナムやタイをはじめとしたインドシナ諸国へその生産拠点をシフトしている。

 タイとミャンマーは海運が主流となってきたが,南部経済回廊,東西経済回廊などの陸運整備により,陸運もさかんになっている。

 隣接する国と物流網を確立して国際分業の一員となることが重要課題となっている(注1)。

 第三に,第二の関連でもあるが,インフラ開発にとって外資誘致が必要であり,その外資誘致において,手続きを簡素化する必要がある。

 インドネシアのジョコ(Joko Widodo)大統領はインタビュー(注2)でも語っているが,中央,地方の許認可口を一本化していくことが今後望まれる。

 ミャンマーのティラワ経済特区においてはワンストップサービスが既に行われている。

 また,インドネシア政府はインフラ開発において民間資金の活用を拡大する。

 ジャワ島横断鉄道は,ジャカルタとスラバヤ間(約750km)を従来の半分の5時間半で結ぶ計画である。

 路線を改修し,踏切を廃止,約300の陸橋を新たに造成し,既存鉄道を高速化する。開発費は,約60兆ルピア(約4600億円)に上る。ジョコ大統領は日本と建設すると明言している。政府資金のみならず民間資金を活用する。これまで原則として国や国有企業が携わってきた空港建設も民間資金を活用していたが,今後は手続きも中央政府に集約し民間企業が投資しやすい環境をつくる(注3)という。これらは他の国においても追随されるだろう。

 では,ASEAN諸国首脳間ではいかなる動きを見せているか。

 第32回ASEAN首脳会議が2018年4月28日,シンガポール・シャングリラホテルで開催された。ASEAN首脳会議は春と秋の年2回開催され,春は当該年の主要目標が,秋は対話国を招いた成果の取りまとめが行われる。

 今回は,議長国シンガポールが「強靭(きょうじん)性とイノベーション」を主要テーマとする「強靭で革新的なASEANのためのASEAN首脳構想」を採択し,「ASEANスマートシティネットワーク(ASCN)」の設立を本年の主要成果とすることが決定された。

 ASEANシングルウインドー(ASW)に基づくASEAN物品貿易協定(ATIGA)原産地証明書の電子証明書の導入(2018年1月から,インドネシア,マレーシア,シンガポール,タイ,ベトナム5カ国で運用開始)や,認定経済事業者(AEO)制度のASEAN域内の相互認証アレンジメント導入に向けた調査提案などが歓迎された。また,ATIGAにおける自己証明制度の年内導入や,ASEANサービス枠組み協定(AFAS)最終パッケージ交渉の年内妥結,AFASの規定を強化したASEANサービス貿易協定(ATISA)の年内署名などが期待されている(注4)。

 特に筆者はASWについて近年着目している。今後ASEANが変化する大きな要因であると思っている。今後注視していきたい。

[注]
  • (1)『日本経済新聞』2017年10月16日。
  • (2)『日本経済新聞』2017年12月24日。
  • (3)『日本経済新聞』2018年4月21日。
  • (4)2018年05月02日「JETROビジネス短信」

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