世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.766

アジアに広がる日本的サービスを支えるロジスティクス

岸本寿生

(富山大学 教授)

2016.12.19

 マレーシア・クアラルンプール国際空港から車で走り出すと,すぐに日系のアウトレットモールがみえる。そして,首都クアラルンプールに近づくと,日系の大型ショッピングセンターやデパートが目に入ってくる。タイでは,あちらこちらに日本のラーメンや和食の店が出店している。このような光景に当初は驚きがあったものの,だいぶ見慣れてきた感じがする。

 日本の非製造業の対外直接投資は製造業に比べると端緒についたばかりといえるが,2010年頃から増加しつつあり,近年のアジア向け卸売,小売の対外直接投資フローは,電気機械器具を凌駕し,輸送機械器具と匹敵する規模の年も出てきている。その背景には,日本企業に対する評価が,製品の品質に加え日本的サービスにおいても大きく向上したことがある。ただし,サービス産業は一過性の進出だけではすまされない。規模の拡大と共に,拠点設置から現地への様々な機能移転をして持続的なサービスを提供しなければならい。

 このためには,現地の拠点となっている店舗やレストラン,また,ネット通販を利用する現地のカスタマーに,日本からの品物を届けるサプライチェーンの構築が不可欠である。午前零時を過ぎると沖縄那覇空港に10数機のANAの貨物機が日本国内と東アジア各地から集結する。そして数時間の内に荷物を積み替え飛び立っていく。それが毎日行われている。この巨大な駐機エリアと貨物建屋は,2009年の設立当初の稼働状況から大幅に向上している。また,ヤマト運輸が,その周辺に「サザンゲート」と呼ばれるロジスティクスセンターを設立し,詰め替えやメンテナンスなどのサービスを提供している。そして,アジアの数カ国で,「TA-Q-BIN」ブランドとして宅配業務を展開し始めている。

 今まさに,国内の生産地から沖縄の国際ロジスティック・ハブを経由し,アジア各地で個別配送を行っている。その時間が24時間で実現し,しかもクール便など鮮度の求められるものの輸送が可能になり,現地の小売や和食店にこれまでにない商品の提供が可能になる段階まで来ている。このような物流の実現は,日本オリジナルの商品の提供だけでなく,それを契機としたより質の高い日本的なサービスの提供も促している。

 しかし,まだ多くの課題が残っている。ロジスティクスにおいて時短が進むと,輸送時間に占める通関の時間が大きくなる。自由貿易協定では通関業務の統一化,簡素化や電子化(EDI)についての条項が盛り込まれることが多いが,十分実行されているとは言い難い。通関箇所の増設,税関の人材の育成や通関EDI促進を具体的に進める必要がある。

 また,海運のスピードアップ化も求められている。国際的な個別配送網の構築が期待される。

 日本の観光業は,これまで日本人の海外旅行の需要を掘り起こしてきたが,今ではインバウンド(訪日外国人旅行客)需要も注目している。同様に,サービス産業においても,One-way(一方向)からTwo-way(双方向)の戦略を模索しなければならない。クールジャパンといわれるような「日本の魅力」もしくは日本的サービスを外国で提供すると同様に,外国のサービスを日本国内で享受することが肝要である。そうなれば,よりサービス産業の活性化がなされるであろう。

 現在TPPこそ先行き不透明であるが,日本とASEANの市場統合は漸進しており,もはや,製造業だけでなくサービス産業の有力な投資先となっている。アジア経済圏を考える上でも,サービス産業の持続的な海外展開は必須である。「点から線,線から面」という三次元的展開を捉えると,現在は「点から線」の段階で,なおかつ,「線」もTwo-wayが始まったばかりである。今後のグランドデザイン描写が待たれる。

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