世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
国際金融レジーム:その脈拍の測定を
(新潟県立大学 学長)
2016.05.23
もう一昔になるが,2005年にWIN/Gallup InternationalとVoice of the Peopleという世論調査チームが世界銀行,国際通貨基金,そして商業銀行について世界中で実施した調査のデータが面白い。2008年のショックを経て,世界がパニックと停滞に入ったので,世界銀行と国際通貨基金の評判はさらに悪化したのではないかと思うが,他にデータがないので役に立つと思う。世界銀行について世界平均は37%。高い点をつけているのはニカラグアとコソボである。どちらも68%。最低なのはアルゼンチンでマイナス31%。国際通貨基金の世界平均は22%。高い点をつけているのは,コソボで,65% 。最低なのはアルゼンチンでマイナス50%。商業銀行の評判は非常に低い。日本はマイナス2,ロシアはマイナス64,中国はマイナス47,ドイツはマイナス42である。高いのは香港,レバノン,コロンビア,シンガポールでそれぞれ,プラス31,プラス21,プラス12,プラス9である。
2008年以降,国際金融をあずかるこのような国際制度に対しては極端に不信感が増加しているはずである。国際金融のレジームはどのように変化しているのか。米国第一主義は不変でも,レジーム費用負担は米国以外の経済大国日独などでやれというのが米国大統領共和党候補になりつつあるデイビッド・トランプ氏の意向のようだ。知的所有権,軍縮・平和,労働,コミュニケーション・貿易,健康,福祉などのレジームは静かに変化しつつある。G1は名前は貸すが,費用は日独というのではうまく機能しないだろう。G2は米中首脳の長い会談でもらちは開かずじまいだった。G7はまだましだろうとい意見も少なくないだろうが,未来を開く道を示すことができるほど結束は強くない。独は日と異なり,財政拡大に絶対反対である。G20は米国経済が回復に向かうにつれ,新興国は元気を喪失している。逆にアフリカや南アジアのように,遅いけれども経済発展で高い成長率を示している。
レジームが確実に着実に変化してはいるが,その費用分担について,その理論的武装について,どのような意見がでてくるか。ひろく世界をみずにはますます世界運営は難しくなるだろう。世論調査を世界中でしっかりと実施し,正当性と信頼をどこまであるかをよくみながらの世界運営が一層不可欠になるであろう。
5月半ば,米国テクサス・オースティンで開催された World Association for Public Opinion Research (WAPOR)の年次大会で発表したものの一部であるが,世界は広くなったのである。世界世論の重要性は一段と高まっている。世論調査の必要性は一段と高まっている。
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