世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
借金をしての投資
(愛知淑徳大学ビジネス学部ビジネス研究科 教授)
2024.01.08
読者の皆様ご高尚の通り,経済の分野では,市場の余剰資金を保有している黒字主体から資金を預かり,その資金を基にして,資金を必要としている赤字主体に貸し出すことによって,資金を動かすと共に,「信用創造をしていく」ということによって「経済規模そのものを拡大させる」ことは容認されている。
もちろん,筆者もそうした信用創造を否定する者ではない。しかし,「行き過ぎた信用創造」は経済社会を壊す原因ともなり得,「バブル経済」の根源ともなり得ることから,「行き過ぎた借金によって,経済規模を膨らませ過ぎると,借金が返済出来なくなり,経済社会そのものが一旦は破裂する」。即ち,破綻することもあり得る訳であり,貸し手も借り手も,「返済能力」を意識しながら,貸す,借りることをしなくてはならないのは言うまでもない。
こうしたチェックを怠り,借金をさせ過ぎて,返済が出来なくなった借入人が増え,その結果,結局,貸し手にとっての不良債権が拡大してしまうと,貸しても破綻する訳であり,もし,その破綻する貸し手が,世界的に著名な大手の金融機関であれば,その余波は大きい。
即ち,その大手の金融機関の破綻を見て,その他の金融機関が一気に,信用収縮(貸し渋り,そして貸し剥がし)に入ると,経済は一気に冷え込み,混沌となる。
そして,こうした,経済破綻が世界中に広がった事例こそが,「2008年9月に発生したリーマンショック」であったと言えよう。
こうしたことから,「借金をしての投資」は慎重にすべきであると筆者は考えているが,最近,韓国では,以下のような事態となっていると報告されている。
朝鮮日報の以下の記事を基に,その現状を概観したい。韓国は,いち早くポジションの改善に図るべきであろう。
「中学校教師になって5年目のイさん(29歳)は2021年3月,京畿道のあるマンションを2億3,500万ウォン(約2600万円)で購入した。預貯金がほとんどなく,両親に5,000万ウォン借り,残りは教職員共済会のローンなど,借りられるものはすべて借りた。イさんは現在,月給230万ウォンの半額を上回る135万ウォンをローン返済の為に使っている。2022年4億ウォンまで値上がりしたマンション価格は,購入時の価格まで下がった。イさんは,利子を返す為に食べるものも買うものも減らしているが,首が回らないと言っている。
2~3年前にローンを無理に組んで住宅を購入した20~30代のヨンクル(魂まで差し出した借金)族が高金利の長期化や住宅価格下落に直撃されている。
最新の韓国銀行・金融監督院・統計庁の2023年家計金融福祉調査によると,39歳以下の世帯主の資産保有額は2023年3月現在,平均3億3,615万ウォンで,1年前の3億6,333万ウォンより7.5%減少した。20~30代の世帯主の資産減少幅は,40代(-5.3%),50代(-5.9%),60歳以上(+0.9%)など,他の年齢層よりも大きくなっている。」と報道されている。
借金や投資は全て自己責任であり,自業自得ではあるが,こうした現象が社会全体に広がってしまうと経済社会は大混乱をきたす。行き過ぎた信用創造による経済発展はやはり適切にコントロールさせていくべきであり,日本としても健全な金融社会を継続すべきであろう。
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