世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
外資企業はポストコロナのASEANへの投資に積極的
(亜細亜大学 特別研究員)
2021.06.21
2020年のASEANの実質GDP成長率は前年比マイナス3.3%と,1997年のアジア経済危機時のマイナス7.4%に次ぐ落ち込みとなった。コロナ禍によるサプライチェーンの寸断,ロックダウン,入国管理の厳格化などによる経済活動の混乱が続く中で2020年の対内直接投資額は33.2%の大幅な減少となった。2021年の成長見通しは4.9%に回復するが,力強さに欠けるとASEAN事務局はみている。
米中対立,コロナ禍というダブルショックの中でASEANに進出している外資企業は,ポストコロナの投資に積極的であることが判った。ASEAN事務局の調査によると,調査対象外資企業のほぼ5割が今後5年間にASEANでの投資を増加すると回答している。投資を減少させるという回答は4%に過ぎず,9割近い外資企業が投資を増加あるいは現状維持と答えている。
この調査はASEANに進出している外資企業505社を対象に実施された。日本企業を対象とした調査はジェトロが毎年実施しているが,この調査には日本以外に米国,EU,中国,豪州,カナダ,ロシア,インド,韓国の企業が参加している。調査時期は2020年10−11月であり,コロナ禍の最中にもかかわらず,外資企業がASEANへの投資に積極的な姿勢を示したことはポストコロナのASEANの経済を見る上で明るい材料である。
投資を増加する最大の理由は消費者・中間層の増加であり,外資企業は消費市場としての発展に大きく期待している。ほかに,インフラ整備,安定した政治経済環境,ビジネスの容易さなどが主な理由となっている。ASEANは2003年以降,ASEAN経済共同体(AEC)創設を目標に貿易投資の自由化,インフラ整備,ビジネス環境の改善などに取り組んできた。2016年からはAEC2025を目標に経済統合に向け多様な行動計画を実施しており,こうしたASEANの着実な取組みが企業により高く評価されたといえる。
この調査報告は,ASEAN事務局が2021年4月28日に発表したAECブループリント2025の中間評価(Mid Term Review)に掲載されている。中間評価ではAEC2025ブループリントの5つの目標の実施状況が様々な指標で分析・報告されており,企業調査もその一つである。中間評価はASEAN事務局のASEAN統合モニタリング部局がEUのASEAN地域統合支援(ASEAN Regional Integration Support by EU: ARISE)プログラムの資金による協力を得て実施した。
付記: 中間評価の詳細は,「ASEAN経済共同体ブループリント2025の中間評価」ITI調査研究シリーズ120を参照ください。
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