世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1782
世界経済評論IMPACT No.1782

スパイダーネット・ブロック化冷戦下の日本再発展戦略

三輪晴治

(エアノス・ジャパン 代表取締役)

2020.06.22

世界は「蜘蛛の巣」ブロック化へ

 これからは,各国は,「蜘蛛の巣」のように,自分のサイバー・ネットワークを持ち,生き抜くことになる。アメリカを中心とする資本主義諸国は,中国,ロシアとは別の経済圏ブロックで活動することになるであろう。つまり「アメリカブロック」,「中国ブロック」,「ロシアブロック」というブロック化ができるのであろう。

 「アメリカブロック」には欧州,日本,インド,オーストラリアが加わりそうだ。しかしアメリカは日本に対してはこれまでの日米安全保障の枠組みを変えるであろう。日本も国防,安全保障を自力でやらなければならなくなる。

 「中国ブロック」には「一帯一路」計画に関係する国が加わるだろう。イタリア,イラン,スペインなどが加わるのかもしれない。そして韓国,北朝鮮が加わるであろう。ファーウエー5Gの通信技術でイギリス,ドイツ,フランスは中国に加担していたが,最近イギリスのジョンソンもドイツのメルケルも中国離れしてきた。そしてパキスタン,インドネシア,マレーシア,ミャンマーでは「一帯一路」プロジェクトは行き詰っているが,中国はこのコロナ危機を逆手にとって,仲間を拡大し,版図を広げようとしている。

 「ロシアブロック」には東ヨーロッパ,ユーラシア諸国が加わるのであろう。交易としては,ロシアは中国に繋がるかもしれない。

各国,各ブロックはそれぞれ自分の「サイバー・デジタルネットワーク」と「フィジカル・ネットワーク」をつくる。「アメリカブロック」の各国はブロック内の他の国と「ゲートウエー」という関所で繋がることになるであろう。

 当分は各国とも内需の拡大で経済を発展させることになる。縮小してきた各国の内需を,賃金を上げ,生産性を上げて,拡大することで経済発展が進むことになる。

日本経済の生き残り・再発展戦略計画

 米中の「デカップリング」が進み,世界の経済構造が大きく変わることになる。その中で日本は「ポスト・グローバル化」に舵を切り,日本が生き抜くために「経済企画省」を創設して「再発展戦略計画」を策定し,すぐ行動しなければならない。

(a)国家主導でデフレの脱却

 先ず日本は20年続いたデフレから脱却しなければならない。中国への輸出はなくなる。観光立国,インバウンドは当分忘れる。デフレで縮小した日本市場の内需を拡大しなければならない。安全保障の意味でも,これまで中国に頼っていた基礎素材,基礎製品を他の国に移すか,国内で生産しなければならない。

 「国債発行による大型投資」:以下に述べる乗数効果の高いいろいろのプロジェクトを創り,向こう5年間毎年50兆円の投資を続ける。劣化した社会インフラを増強する。

 「非正規社員制度の撤廃,中央労使制度の施行」:これにより労働分配率を正常化し,労働者の賃金を上げる。

 「消費税の撤廃」:消費にペナルティをかけ,内需を縮小してしまう消費税を向う3年間0%にする。

 「生産性向上投資」:賃金が上がっても産業競争力を強化するために果敢な生産性向上投資をする。これで「第4次産業革命」が起こる。大企業は460兆円もの内部留保をもっているのでこれを活用する。

 これにより日本のGDPを700兆円レベルにする。そうするとデフレから脱却でき,賃金も上がり,国民の所得が上がり,税収も増加し,少子化も緩和されることになる。

(b)米中デカップリングによるブロック化で,日本独自のサイバー・デジタルネットワークを創る。過度な監視社会にならないような仕組みにする。

(c)グローバル・サプライチェーンを組み換える。中国の「世界の工場」を排除し,安全保障として必要な自国での生産を増やし,危機に強い体制にする。産業界もグローバル化をやめ,産業を国の安全保障という意味で再編する必要があり,生産を国内か近隣アジアに戻し,内需を拡大する。企業も地域社会と社員を豊かにするような活動に変える。

(d)安全保障:食料自給率を大きく引き上げる必要がある。農産物の輸出ではない。安全保障としてのインフラを頑強なものにして,生産能力を高める。

(e)日本の自前の「5G,6G通信機器」を開発し,設置する。国が金を投入して早急に国家プロジェクトとしてそれを開発する。

(f)日本独自の「知識・情報検索サイト:強靭なサイバー・ネットワーク」の確立。日本人のための情報検索サイトを確立する。これを含めたサイバー・ネットワークを確立し,外からの攻撃を防ぐ。これが国の免疫力強化であり,危機管理力の強化になる。そして「意識としての国家主権,国民主権」を回復することである。

(g)先端技術の開発:国立科学研究所の設立。大型投資により先端技術と新しい主導産業を開発する。

(h)比較優位による国際分業としての日本の「戦略輸出産業」を開発する。

 FRBとMITによる,1918年の「スペイン風邪」における「感染対策と生産・雇用の関係の分析」によると,「より早期に,より積極的に疫病の封鎖を行った方が,パンデミック終息後の雇用や製造業の生産,金融にプラスになる」という。つまり,早期のロックダウンと積極的な経済対策の実施が疫病感染被害を少なくするのである。逐次投入では成功しない。

 共産主義社会の寿命は80年ぐらいといわれてきた。ソ連の場合がそうであった。しかし中国は,1980年からのアメリカの「エンゲージメント」により,アメリカから技術と資本をもらって経済を資本主義化し,消費財産業の力をつけてきたので,中国共産社会はもう30年ぐらいは続くだろう。

しかし,情報統制と人民の弾圧による中国共産社会は,いずれ人民による反攻により崩壊することになろう。中国社会の歴史はそうであった。中国が自由で民主的な国になれば,アメリカブロックと中国ブロックは同じ資本主義経済市場として融合することになろう。ここでまた世界の構造が変わることになる。しかしサイバー・ネットワークの中では「Indirect approach戦争」は続くであろう。

 日本は,こうした考えで,この「生き残り・再発展戦略計画」を策定し,それを果敢に実行し,経済の発展を図らなければならない。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1782.html)

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