世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1770
世界経済評論IMPACT No.1770

デジタル・ネットワーク社会の陥穽:サイバー・ネットワークも米中デカップリングへ

三輪晴治

(エアノス・ジャパン 代表取締役)

2020.06.08

デジタル・ネットワーク社会は監視社会

 1981年ころからアメリカが本格的にグローバル化を仕掛けたが,その中で「デジタル技術」が開発され,それにより,「国家の壁」を中心にしてできた世界が「デジタル・ネットワークで繋がる社会」に移行してきた。人々は,これで世界は市場を適切に管理できるような「効率の良い調和の時代」が来ると思った。

 半導体が発明され,コンピュータが生まれ,それを基に創り上げられた「インターネット」,「高速通信システム」,GPS,AI技術,クラウドコンピューティング,サベーランスカメラによる監視システム,イメージセンサーやガスセンサーなどの「センサーネットワーク」,「安全なブロックチェーン」などの技術が開発され,「デジタル・ネットワーク」,「金融フローネットワーク」が世界中に張り巡らされた。これで世界中の国,人,モノ,カネが「サイバー・ネットワーク」で繋がり,モノも「グローバル・サプライチェーン」で連携して動くことになった。この「デジタル・ネットワーク社会」では,全ての人が「知識・情報」を世界のどこからでも検索して,常に新しい情報,知識で活動し,生活する社会が生まれた。こうした技術革新は人間の日常生活を豊かにする素晴らしい社会を約束するように思えた。

 しかしこうした「技術」は,「三性の理」ということわりで言えば,使う人により「善」になったり「悪」になったりする。現実にはこの「技術」は,あるプラットフォーマーか国家がコントロールし,個人情報をも集めて,ネットワークを使い,他を攻撃することにもなる。しかし「三性の理」が説くように,その「善」と「悪」をアウフヘーベンして「全機的な最適状態」にする必要がある。

 現実には,デジタル・ネットワーク社会として世界をリードしているアメリカでは,米国安全保障局は,あらゆる種類のコミュニケーションを傍受し,特にAT&Tやベライゾンのテレコム企業の通信ネットワークを盗聴し,敵対国と同盟国の双方の通信の脆弱ポイントを特定し,情報を取り出す秘密のプログラムを作動させ,グローバルにインターネットを監視する装置を造っている。アメリカは国内では,ウォーターゲート事件のように,通信の盗聴はしばしばおこなわれてきた。それは,ジョセフ・スノーデンらにより暴露されている。米財務省は,国際金融システムを利用し,無法な国家と企業にペナルティを課している。中国との貿易戦争においても,アメリカは中国のグローバル・サプライチェーンの脆弱ポイントを突くことで,企業と国の経済全体を拘束する。これでアルカイダや北朝鮮の人を監視し,グローバル資金の流れを監視し,制裁する。このコロナウイルス災害に対して,香港,韓国などは,「行動追跡アプリ」で人々を監視し,感染者の行動を丹念に追跡し,接触者を特定しながら,感染を少なくすることに効果を上げているといわれている。これはイギリスやドイツでもやられている。こうして「監視社会」が進みつつある。

 このようなネットワーク社会においては,通信機器システムは自国のものを使い,管理しなければならないということである。そのためにアメリカは,中国のファーウェイの5G通信機器は使わないとし,トランプはファーウェイの通信機器を締め出し,他国にもそれを使わないように要請している。

中国というデジタル・ネットワーク先端社会

 中国も,情報統制しながら,膨大な数の高画質サベーランスカメラを国中に設置し,顔認証技術,スパイウェア,自動テキスト分析,ビッグデータ処理により広範囲な人民の管理をし始めている。中国共産党は,個人と企業の税還付から銀行取引明細,ショッピング履歴,犯罪歴や医療記録などの膨大なデータを集めて,AIを使って分析し,個人や企業の「社会信用スコア」を設定し,許容される個人や企業の行動を決め,統制を強化している。常に反体制的な言動を監視し,これを取り締まっている。

 そして中国は,共産党社会の管理のための重要な情報については独自のデジタル・ネットワーク,情報検索サイトを持ち,他国とは「グレートファイヤーウォール」をもって遮断している。外からのネットワーク攻撃をプロテクトし,ライバルを攻撃できるようにしている。アメリカのGoogle,FacebookやAmazonは中国にすり寄り,中国のネットの中に入ろうとしているが,中国はそれを拒否している。

 このようにデジタル・ネットワークによるグローバル化は,自由化ではなく,脆弱性を突き,競争と攻撃をもたらすことが明らかになった。つまり,ネットワーク社会は,自由と調和への道筋ではなく,むしろ「自由を縛り付ける鎖」の様になってきているのである。世界中が相互に絡み合い依存していることが,大きな危険をもたらし始めている。こうなると米中のそれぞれのサイバー・デジタルネットワークは互いの乗り入れはできなくなる。サイバー・デジタルネットワークの中で,米中の「デカップリング」が起こることになる。

 今日の知識・情報は,Googleのクラウドと情報検索サイトを通じて流れている。プラットフォーマーのGoogleは,世界から情報,データをクローラーで収集し,それをGoogleの判断で取捨選択して,Googleサイトに流している。日本人は,アメリカのこのGoogleサイトを通じて知識・情報を得て生活し,活動しており,最近の若者は自分の頭では考えず,スマホ片手にGoogleの情報で動かされているが,それは大変危険なことである。日本独自の情報サイトを創る必要がある。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1770.html)

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