世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1451

「MMT推奨」日本経済の失敗と再興

三輪晴治

(エアノス・ジャパン 代表取締役)

2019.08.19

日本の過去30年のデフレ経済は何であったか

 日本のGDPは,1995年に5兆ドル(約500兆円)レベルになってから今日までフラットで全く増えていない。アメリカのGDPは1995年の8兆ドルから2018年には20兆ドルになっている。約2.5倍である。中国は2001年の2兆ドル,2010年は日本を越えて6.5兆ドル,2018年は13兆ドルになっている。日本経済の一人負けで,先進諸国のGDPの伸びからして,日本はおかしいというか異常である。

 1990年ぐらいから日本はデフレに陥っており,2013年から日銀の黒田総裁が「異次元の金融緩和」をし続けているが未だにデフレを脱却できないでいる。デフレなので企業も設備・技術投資はできないし,賃金も上げられない。国民大衆も先行きが暗いので金は使わないし,貯金をする。経済はますます悪くなる。日本は経済政策を誤ってしまったようである。

 日本政府の負債を見てみよう。政府はどうしたことか昔から「緊縮財政」で金は使わない主義を貫いてきた。しかしそうした中でも日本の国債は発行され,国債残高も増大し,政府の負債残高も増えている。1975年大平正芳大蔵大臣が最初の赤字国債を発行して,「万死に値する。一生かけて償う」と言ったけれども,日本では国債が少しづつ発行された。政府の長期債務残高は,1995年450兆円になり,2004年には700兆円,そして2018年には1,100兆円に上っている。GDP比230倍の債務である。

 財政投資についてみると,1980年ころから財政投資が徐々に拡大し1995年約40兆円をピークにしてまた急速にさがり2005年以降年13兆円ぐらい投資されている。この日本の財政投資額は,アメリカなどの先進国に比べて大変少ない。アベノミクスは,(1)金融緩和,(2)財政投資,(3)成長戦略という3本の矢であったが,やったのは金融緩和だけで,財政投資はほとんどやっていない。アベノミクスは物価を2%上昇させるために異次元の金融緩和をさせてきたが,それはアベコベで,物価が上がるのは経済活動,産業活動が活発になる事によるもので,その逆ではない。異次元金融緩和はデフレ脱却には全く効かないことが証明された。それでも日銀は金融緩和をやり続けている。

 しかし,その少ない13兆円の財政投資ではあるが,それがGDPに跳ね返っていないのが不思議である。「乗数効果」はゼロに近い。これは少しおかしい。安倍内閣は財政投資をやりたかったのであろうが何をやったら良いのか分からなかったので,やらなかったということであろう。

日本の産業政策の失敗

 つまり日本は経済発展,産業発展のための金の使い方が分からなかったということかもしれない。景気対策としての財政投資については,ケインズは,まさかそんな馬鹿なことはしないでしょうがとして,「労働者に地面に穴を掘らせ,掘り終わったらその掘り上げた土をまた穴の中に入れさせる」という極端な例をあげた。しかし日本はその馬鹿なことをやり続けてきたのかもしれない。かつて民主党が「コンクリートから人へ」と言ったが,経済活動が巻き起こらないところでコンクリートだけを流し込んでいるのではないか。日本経済の問題はこうである。手押し井戸ポンプに注入する「迎え水」が「国債による財政出動」であるとすると,ポンプのパッキンが擦り減っていると,いくら迎え水を入れても,経済の活性化という井戸の水はちっとも出てこない。ポンプのパッキンを修理しなければ駄目だ。壊れているポンプのパッキングとは,「日本の経済政策,産業政策の立案力と実行力」で,それが壊れているということである。

 公共投資としてなされたもので,殆ど自動車が通らない地方の一般道路,高速道路の建設,空き家のようになっている公民館とか体育館,博物館など無駄なダム建設があり,投資による経済の活性化がゼロに近いものが多くあったということになる。逆にその設備の維持費だけかかるというものになっている。

 政府はクールジャパン機構,競争力強化支援ファンド,海外需要開拓支援機構などをつくり,多くの金を使ったが目覚ましい効果は出ていない。最近また政府によるファンドが沢山出ているが,残念ながら,日本経済の活性化に繋がるものはあまりないと言わざるを得ない。不振の半導体産業などに政府がいろいろの形で資金のテコ入れしたが,世界市場でどう生き残り発展させるかの明確な戦略がなかったために,最終的には外資に持っていかれ,日本の半導体産業などは殆ど消えてしまった。

 日本では寡占大企業に膨大な補助金を与えるとか,寡占化をさせて日本企業の競争力をそぐような産業政策で,無駄な金を使ってきた。政府のイニシャティブでいろいろの新技術開発プロジェクトに金を投入してきたが,そのプロジェクトの技術目標の設定と取り組みの戦略を誤ったために,成功したプロジェクトは殆どない。緊縮財政だからということで大学に対する補助金を削り,国立大学を自分で稼がなければならない独立行政法人してしまい,研究者は資金稼ぎや事務処理に追われ本当の研究開発ができなくなってしまっている。これで日本の科学技術開発力が低下している。

日本は何をやらなければならないか

 先ず日本がやらなければならないことは平成デフレを脱却させることでる。このデフレが日本産業を,日本国民を鬱にしてしまい,新しいイノベーションに挑戦できないようにしている。先ず減税やMMTで,大型財政投資によりデフレ脱却軌道へのアクセルをふかすことが必要である。しかしその大型財政投資は,経済が活性化するような産業政策,経済政策を作りそれに向ける必要がある。これによりまず「国力としてのGDP」を700兆円ぐらいに引き上げなければならない。

 有効な財政投資をする力という「ポンプを修理」し,G−W−G’と経済が拡大するようなプロジェクト,主導産業の開発を計画して,投資しなければならない。アメリカが20世紀の前半に産業,経済が伸びたのは「タームローン」による社会基盤・産業プロジェクトの開発・実施よるものであったことは知られているが,日本もそのような国家プロジェクトをつくり,実行しなければならない。そして日本が今すぐやるべきものは,ナノマテリアルテクノロジーとデジタル技術で既存のいろいろの産業を再構築し,産業と社会の基盤を強化することである。それを国家的な運動として推進することである。

 そのために日本にとって有効な産業政策の立案をする「国立シンクタンク」を作る必要がある。そしてかつての「経済企画庁」のような政府自身のシンクタンクを組織することである。アメリカがやったようなアポロ計画のような大きな夢を掲げる必要がある。こうした明確な目的をもった財政投資を実行すれば日本経済は再び発展を遂げることになる。

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