世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1114

中国的資本主義は経済分析の試金石になる

末永 茂

(前・いわき明星大学 非常勤講師)

2018.07.16

 中国の成長は目覚ましく、その巨大な国家の行く末が、我が国にどのような影響を及ぼすのか。誰しもが懸念する関心事ではあるが、充分に描き切れていないというのが、現状ではないだろうか。中国経済社会は国勢調査に始まり、OECD加盟国では見られない程の規模でインフォーマル部門を形成しており、また社会主義政権故に「実態と理念」に大きな乖離が存在している。統計的・数量的分析の計測結果に、新たな解釈を付加しなければならないのは、そのためである。また、比較的順調に成長した小国の政策教訓を単純に移植できないのも、こうした事情による。

 最近の論壇や学界における「実学」志向という風潮の中で、定式化された理論モデル分析が説得的ツールとして評価される傾向にあるが、情報洪水の中でのほぼ10年単位で変動する社会思想・科学的方法の流行(?)を、時として総括しなければならない。つまり、立ち止まる「社会科学」=古典的文献に裏付けられた新領域社会諸科学が、要請されているのではないか。

 現在、コンピューターの急速な発展によって、数量的分析は格段に高いレベルにまで達している。だが、高度で精密な計測の結果が必ずしも社会構造分析として、充分な解明を実現しているとはいえない。従って、数量的意味合いを深い所で検証し、カテゴリーを厳格に設定することが問われる。これを可能にするシステムは数量的分析と社会構造分析の相互補完的な、「連携と分業」の研究制度である。

 経済学は理論モデルから、あるいは古典的文献の解釈学から直ちに政策提言するような方法を超えて、国際経済の急激な変動にも耐えられる、経済学理論の有効性を高めるべきではないか。歴史的に構造化された経済大国の特殊性を把握するために、ミクロ分析➜マクロ分析を貫通した「位相マクロ経済学」とでも命名すべき領域創造を、ここで提唱したい。

 

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