世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.625

急増した日本の農林水産物・食品の輸出:TPP克服への道

朽木昭文

(日本大学 教授)

2016.04.18

1.日本の農林水産物・食品の輸出額

 平成26年の日本の農林水産物・食品の輸出額は,前年に比べて11.1%増加し,昭和30年に輸出額の統計を取り始めて以来の最高値である6,117億円となった。その内訳は,農産物13.8%増,林産物38.5%増,水産物5.4%であった。輸出先は,1位が香港,2位が米国,3位が台湾であった(農林水産省)。農産物では,菓子,清酒,リンゴの順であり,水産物では,ホタテ貝,真珠,さばである。

2.ジェトロ宮崎の農林水産物・食品の輸出の展開

 ジェトロ(日本貿易振興機構)は,クール・ジャパン(日本のブランド輸出)事業の実施とともに農林水産物・食品の輸出の事業を中心に据えている。その事業は,全国に輸出相談窓口を設置し,ワンストップでの情報提供と,海外でのマーケティング活動による支援の実施である。これはグルーバル時代の地方創生の一環である。

 宮崎県のJAが2012年に,宮崎県庁が2013年に香港事務所を開設した。しかし,宮崎県には,農産物を輸出しようとする機運がこれまでほとんどなかった。そこに,ジェトロ国内事務所が,滋賀,奈良,和歌山,群馬,埼玉のみを残して宮崎に2015年10月に開設された。その後,ジェトロ宮崎に毎日のように農産物輸出の問い合わせが切れない。また,宮崎の業者の輸出先は,アジアだけでなく,欧米も含めたグローバル市場である(ジェトロ事務所長,2016年2月23日)。例えば,2016年2月25,26日に開催した「食品マーケティング・スクール」も盛況であった。

3.沖縄県による国際物流ハブの発展

 沖縄県は,ANAとヤマトと組んで那覇空港を利用する「国際物流ハブ」活用推進事業を実施し,アジアのシンガポール,香港,台湾,バンコクなどと深夜便で連結した。これにより今日鳥取で採れたクロムツの魚を明日に香港で食べることができる。この事業の業績は順調に伸びている。

 沖縄は,国際物流ハブの空港をオープンし,アジアでの8つの路線とつながった(2011年8月時点)。沖縄国際航空物流ハブ推進事業の2010年度の内容は,次の事業で実施された。第1に,アンテナショップが香港,台北,上海の7店舗で開設された。第2に,セミナーが国内と海外において沖縄国際航空物流ハブの広報するために開催された。その年に,①国内の仙台,東京,名古屋,大阪,広島,福岡で開催された。②海外では,ソウル,上海,蘇州,無錫,香港,深圳,広州,台北,バンコクで開催された。この事業が2011年度も継続された。

 那覇国際航空貨物ハブが有効活用できる。ANAは,24時間使用できる国際空港を利用し,物流に関してアジア8都市を結んでいる。2012年にこのハブ構想にヤマト運輸が加わった。

4.TPPを超える農・食・観光産業の形成へ

 日本の成長戦略の第3の矢の真の矢は農林水産物の輸出振興である。ただし,目標の1兆円は小さい。5倍,10倍にする必要がある。しかし,経済学でよく知られているように,農林水産物の生む付加価値率は大きくない。農業が第2次産業,第3次産業と産業連関を強化することにより付加価値を大きく高める必要がある。国際観光客到着数が2015年にほぼ2,000万人に増大した。観光産業と農・食産業の連関が必要である。輸出振興する産業政策は,6次産業の「農・食・観光産業」の形成である(溝辺・朽木(2015)参照)。

[参考文献]
  • 溝辺哲男・朽木昭文(2015)『農・食・観光クラスターの展開』,農林統計協会。

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