世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.542

地方創生にハイブリッド・イノベーションを

湯澤三郎

(国際貿易投資研究所 専務理事,復刊「世界経済評論」編集長)

2015.11.24

 地方創生の鍵は地域の若者が地元に留まるか否か,地域が彼らを引きとめる魅力を湛えるかどうかであろう。地域住民は高齢化,人口減を毎日肌で感じている。地域特産の銘品を開発しても日本全体が同様に往時の元気を失っているから,地域の期待通り持続的な需要を掘り起こして創生を永続きさせられるかどうか確信は持てないだろう。

 創生の土俵を地域に限定せず,世界との関わりで考え直してみたらどうだろうか。

 わが国地域の特性と外国の多様性を織り交ぜるなかで,「地域ならでは商品」を開発することはできないか。端的に言えば「ハイブリッド・イノベーション」構想である。

 パートナー国は先進国より途上国の方が潜在性から言って好ましい。先進国は概ねわが国と同様の事態が進行している。内需の停滞は共通の課題だ。一方の途上国では夥しい「不便,辛い,汚い,もったいない」があり,膨大な「ウォンツ」が存在する。地元に有望な素材,資源がありながら,技術力が伴わないためシステムやモノの開発が滞っている。

 いわば途上国はニーズ,潜在需要の宝庫である。必要なのは「気づき」とそれをプロジェクトとして立ち上げ,完成するまでのマネージング力である。企業単独では手が掛かりすぎる場合が多い。各分野に亘る専門性を持った企業,団体などが参画した総合力が決め手になる。産官学の協働はわが国のお家芸だ。地元中小企業間でも相互の連携が日常的になっている。これに自治体の工業・産品の試験場が加わり,商工団体,ジェトロ,JICAが参画する。忘れてならないのは地元工業高等専門学校(高専)と大学の協力である。

 途上国イノベーションのシーズは暮らしのあらゆる局面に潜んでいる。現地の人々は日常の「慣れ」に埋没しており「ハッと」の閃き感度が鈍い。これは訪日外国人の「日本新発見」の感動を見て,我々の日常性に鈍麻した感性を思い知らされるのと同じである。

 途上国における新発見を地域の若者の感性に期待したい。

 地域代表の若者を途上国にホームステイさせ,暮らしのなかから気づきを発掘する役割を担ってもらう。高専生,大学生,企業の若手社員などいずれからでもよい。JICAの青年海外協力隊員として相手国の産業開発を担当するという位置づけも想定できるし,ジェトロ事業の一環(例えば国際即戦力育成インターンシップなど)として派遣することも可能だろう。要は企業や学校の代表ではなく地域代表として,途上国のニーズと地域関連産業・技術を融合すれば何かできそうだという,気づきのフィードバック役を派遣するのである。

 地域の受け皿はフィードバック情報を吟味して,「いけそう情報」を選別して試作品づくりに取り掛かる。関心企業はもとより,自治体の工業試験場設備や高専,大学の理工系設備を駆使すれば,試作品づくりにはさほど苦労しないと思われる。

 試作品をもとに途上国と意見交換しながら完成度を高めてゆけば,途上国40億人の市場参入は一定の成果を収められるだろう。

 途上国の人々に役立つことをしたい,役立つモノをつくりたいという若者の感受性は帰国後も生き続け,そのなかから起業家も生まれるにちがいない。地域が40億の人々の役に立つ仕事をしているという達成感は地域の若者を引き付け,ハイブリッド・イノベーションの更なる発展を促し地方創生の新たな頁を拓くに違いない。

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