世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.574

2016年:日本・世界の経済・金融資本市場の大調整が進行中

齋藤 進((株)三極経済研究所 代表取締役)

湯澤三郎(国際貿易投資研究所 専務理事,復刊「世界経済評論」編集長)

2016.01.22

 2015年半ばから大調整局面に突入した東京,上海,フランクフルト,ロンドン,ニューヨークなどの世界の株式市場の関係者は,新年明け早々から,株価水準の下方調整が急速に進行していることを再確認させられた。今世紀に入ってから三度目のバブル的な株式相場と崩壊である。

 三度目の株価バブルの崩壊過程の先は,非常に長く感じられよう。

 5年から7年も続いた長期のバブル的な株式相場の後に来る1年半前後の下げ相場も,振り返って見れば,比較的に短期に起きた大暴落である。しかし,その渦中にいる多くの市場関係者(中央銀行関係者も含めて)には,ピンと来ないのが実状のようである。

 1980年代から進行した世界的な金融自由化(国際資本移動の自由化)と,第2次世界大戦後に推進された国際貿易の自由化で,世界の各地域の経済・金融資本市場は,相互に共振,同調しながら変動するのが常態となっている。

 国際資本移動と国際貿易の自由化を推進して来た力は,より高い資本の利潤率を求める資本の所有者の欲望である。同様に,労働力の保有者である個々の個人は,より高い賃金率を求めて,賃金率の低い地域から高い地域へと,合法的な方法で,あるいは違法な手段を行使しても,国境を超える件数が増えることになる。

 資本と労働力の国際移動が複雑に入り組み,相互に共振,同調する世界では,一国の金融政策や,財政政策も,国際的な相互依存の度合いが低かった時代とは大きく異なった結末, 政策の発動者が意図したのとは大きく異なる波及効果を持つものである。

 米国,欧州,日本の主要中央銀行が,2000年の株価バブル崩壊後に,2001年の初め以降に足並みを揃えて発動した超金融緩和政策,2008年秋のレーマンショック後に,米国連銀が発動した量的緩和政策,それに続いた日本,欧州の量的緩和政策は,第1義的には,個々の中央銀行が管轄する地域の経済の景気浮揚を狙ったものであった。

 しかし,意図せざる結果をも生んだ。米国・欧州・日本の先進経済圏で創出された新規の信用が,資本の利潤率が低い先進経済圏自体よりも,資本の高い利潤率が見込める中国などの新興経済圏に大挙して流れ込み,その地域の急速な景気拡大,高率な投資,生産能力の飛躍的な拡大につながったことである。

 2014年初め以降の米国連銀が,量的緩和政策の段階的手仕舞いの形で徐々に金融引き締めに移行し,2015年12月には政策金利の引き上げにまで踏み込んだ現在では,国際資本移動の方向が,それまでとアベコベになり,その変化を受けた経済・金融資本市場の変動が順次に起きていると捉えると,現在の世界経済の状況が理解し易かろう。

 中国などの新興経済諸国を含めた世界経済全般に積み上がった過大な資本ストックの大調整過程に入っている訳である。すなわち,大恐慌的・大不況的な展開が,世界の経済・金融資本市場全般で進行していると捉える事が,目の前の現実を理解する鍵となろう。

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国際経済

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