世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
NTT法改正案は売国法案ではないのか
(敬愛大学経済学部経営学科 教授)
2024.04.08
附則第4条「改正又は廃止等必要な措置を講じる」
3月1日に閣議決定されていたNTT法改正案は,4月4日の衆院総務委員会で可決され,4月8日には本会議で成立する運びとなった。4月10日に「国賓待遇」で訪米する岸田首相がバイデン政権に差し出す土産になったと思われる。
なぜ米国への土産かというと,同改正案の附則第4条「令和7年に開会される国会の常会を目途として,電気通信事業法の改正,NTT法の改正又は廃止等必要な措置を講ずるための法律案を国会に提出する」とあるからである。つまり,1985年に電電公社が日本電信電話(略称NTT)に民営化された際の法律(NTT法)において,電電公社時代に国民から集めた電話加入権料収入を基に築かれた通信インフラ,メタル回線の91%と光ファイバ回線の74%の,公共財としての性格と安全保障上の必要を満たすために規定された,株式の3分の1以上は政府が保有すること(第4条),外国人等議決権は3分の1以上にしてはならない(第6条)という歯止めを,削除することが可能となったのである。つまり,政府保有のNTT株を外資に売る道筋が開ける。だからウォール街への贈答だという見方ができるのだ。
そもそもNTT法改正案は,昨年8月に自民党の甘利前幹事長が,防衛費増額の財源は,(政府保有の)NTT株の売却によって確保できると,日曜のテレビ番組で発言したことから,激しい議論が始まった。甘利氏は「5兆円近い政府保有株をいっぺんに売れば株価が暴落するので,数十年かけることになる。それで長期的安定財源になる」と発言したのである。NTT株の時価総額は約15兆円なので,政府保有株を全株売ると言ったわけである。その甘利氏が,昨年12月1日に発足した「NTT法の在り方に関するプロジェクトチーム」の座長になり,今回の改正案に至ったのである。NTTは日本の大半の通信インフラと,次世代通信技術の研究開発力が世界のトップレベルであることから,資産価値は株式時価総額の15兆円を遥かに上回り,少なくとも40兆円はあると見られている。その3分の1,13兆円を5兆円で売却するというのだ。
そもそも,防衛力増強は国債発行で賄うべきものである。武器は使ってしまえば消費されるが,侵略や武力による恫喝から国民の生命と財産を守るための資産と考えるべきである。その資産を備え,インテリジェンスを機能させて初めて,外交が成立するのである。その防衛力増強を,国防安全保障の要である通信インフラの経営権を市場に売却して捻出する,挙げ句の果てに外資に売ることも可能にするとは,正気の沙汰ではない。
NTT法改正案は売国の道ではないかと懸念を深めざるを得ないのは,米国の世界最大のファンド,ブラックロックのラリー・フィンクCEOが来日し,3月21日に岸田首相と面会していること。近年の自公政権は,利権政治の寄せ集めとしか言いようがない。裏金問題はNTTを外資に売る売国から目を逸らすためではないのか。
また,西洋医薬に頼らずに発酵食品で健康を維持する食品を多数開発してきた小林製薬の紅麹サプリによる腎機能障害が大事件になっているが,相関関係はあっても,因果関係を示す試験結果や論文はまだ一つもない。これも,2021年から大規模に実施された感染症予防接種について,世界では3回目以降の摂取をやめているのに,日本だけが推奨を続け,しかも,2021年までの45年間の予防接種健康被害救済制度の対象として認定された件数が3,522件に対し,2021年2月〜2023年11月の新型コロナワクチンによる認定件数は5,357件。うち死者数は45年間の他の予防接種が151件に対し,新型コロナワクチンは377件。これも因果関係は立証できないが,「否定できない」という理由で認定されているのである。この問題を報じたメディアは大阪サンテレビだけ。他は一切目をつぶっている。紅麹を大事件にしているのも,目眩しではないのか。
国会議員は,票集めと政治資金集めにしか頭が働かないようだ。宏池会の政治資金パーティには,多くの近隣国人が参加していた画像が公開されている。官僚は天下り先に利益誘導すれば操ることができるだろう。専門家と称する学者は,政府の委員会ポストと委託研究費で誘導できる。マスメディアも,上層部の経営判断によって,報道しない自由を行使し,民主主義を機能停止させる役割を果たしている。
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