世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.3291
世界経済評論IMPACT No.3291

インバウンド消費拡大に向けて

小野田欣也

(杏林大学総合政策学部 元教授・非常勤講師)

2024.02.12

 本年1月17日の日本政府観光局発表によれば,2023年の訪日外客数(国籍に基づく法務省集計による外国人正規入国者から,日本を主たる居住国とする永住者等の外国人を除き,これに外国人一時上陸客等を加えた入国外国人旅行者)は推計値で2506万6100人であり,これはコロナ禍以前の2019年の8割程度まで回復している。訪日外客数は,2000年代は500~800万人で推移していたが,アベノミクス以降増加に転じ,2013年1036万人,2016年2404万人,2019年3188万人と増加してゆく。2020年以降はコロナ禍のため2020年412万人,2021年24.6万人,2022年383万人と減少し,2023年から復活した。2020年から2022年までは世界的にコロナ禍対策のため金融緩和が行われ,日本はマイナス金利政策が続行したものの,諸外国に比して相対的な円高が進行したことも訪日外客数減少の一因であろう。

 訪日外国人旅行消費額,いわゆるインバウンド消費額についてはここ10年で急速に拡大している。2013年に1兆4000億円であったものが,2016年3兆7000億円,2019年4兆8000億円と増大し,2020~2022年はコロナ禍で急激に減少したものの,2023年は5兆3000億円(観光庁「訪日外国人消費動向調査」の速報値)と,2019年をしのぐ金額となった。2023年はまだ数値が確定していないが,2019年の場合インバウンド消費額は経常収支黒字の約25%にのぼる。

 日本人国内旅行消費額と比較すると,2023年の数値はまだ発表されていないが,2019年は21兆9000億円,延べ旅行者数5億8700万人であり,訪日外客数の18倍,外国人旅行消費額の4.6倍とその差は大きい。

 外国人旅行者数を世界と比較すると,2019年では第1位がフランス8932万人,第2位スペイン8351万人,第3位アメリカ7926万人,第4位中国6573万人,第5位イタリア6451万人と続き,日本は第12位でアジアではタイに次ぐ3位となっている。外国人旅行者数ではオーストリア,ギリシャと同程度の数値である。今後もインバウンド消費の拡大は期待できるが,世界と比するとその格差は格段に大きい。

 また2023年(速報値)の訪日外国人旅行消費額ではアジアが全体の2/3を占め,北米14%,ヨーロッパ7%などとなっている。各国別の数値では台湾7786億円,中国7599億円,韓国7444億円,アメリカ6062億円,香港4795億円などとなっており,2019年と比較して全地域計で+9.9%,主要20カ国のうち,中国-57.1%,ロシア-48.1%以外はほぼ2桁の伸びであった。2019年では訪日外国人旅行消費額に占める中国の割合が36.8%にのぼり,2023年は14.4%であった。国際情勢や中国景気の動向にも依存するが,中国からの旅行者増加が望まれる。2022年まではゼロコロナ政策による海外旅行自粛指示や,帰国後の陰性証明書取得,帰国後の施設での隔離などにより海外旅行が低迷していた。また2023年8月9日まで中国文化旅游部により,日本行き団体旅行やパッケージツアー商品の販売禁止措置が行われていたことも,2023年の旅行者減の特殊要因であった。

 日本は近年外国人旅行者および外国人旅行消費額が急増しているが,先に述べたように上位諸国の50%以下の水準に留まっている。ヨーロッパ諸国はEU域内での移動が多く,アメリカや中国は国土の広さが外国人旅行の多様性を生み出している。日本のインバウンド消費拡大に向けて期待される事柄は何か。

 日本はかって極東と呼ばれていたが,今では地政学的な不利は解消されている。例えばAPECでは地理的に中間やや西寄りに位置し,アジアやアメリカ大陸へのハブ的な場所にある。インバウンド拡大のためには一般的に,観光資源の強化,交通アクセスの向上,言語サービスの拡充などが指摘される。その中でも大分解消されつつある問題もある。昔から多国語対応の問題が指摘されているが,タブレットやスマホで利用できる音声翻訳ソフトはそのかなりの部分を解決している。また観光資源の強化は自然や地方の伝統芸能のイメージが強いが,外国人旅行者のアクセスでは大都市が圧倒的に多い。大都市でのインバウンド消費を呼び込む戦略も重要である。例えば東京近辺では,渋谷,浅草,舞浜などである。東京では再開発が進行中であり,ここにインバウンド需要を呼び込む可能性が高い。

 今後は日本のマイナス金利政策撤廃など金融正常化と欧米諸国の金融緩和,さらに加えて中国では2月初旬からの預金準備率引き下げなど,円高の傾向も予想される。円安=インバウンド増の逆回転が起こりうる可能性が高く,為替レート変化に依存しないインバウンド拡大政策が望まれる。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article3291.html)

関連記事

小野田欣也

最新のコラム