世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.2777
世界経済評論IMPACT No.2777

避けられないエネルギー基本計画の改訂

橘川武郎

(国際大学 副学長・大学院国際経営学研究科 教授)

2022.12.05

 今年9月に開催された第50回総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の席上,筆者は,「第6次エネルギー基本計画(第6次エネ基)はすでにボロボロになっている。『北斗の拳』になぞらえれば,『お前は既に死んでいる』状態だ。すぐにエネ基を改訂すべきだ」,と発言した。なぜ,そう考えるのか。

 第1に,第6次エネ基は,原子力発電所のリプレース・新増設を想定にいれていない。しかし,今年8月,岸田文雄首相は,年末までに政治決断を下すテーマの一つとして「次世代革新炉の開発・建設」を取り上げた。9月には三菱重工業が,北海道電力・関西電力・四国電力・九州電力と共同して,革新軽水炉(加圧水型)SRZ=1200の開発に取り組むことを発表した。これらの動きが本物であるならば,リプレース・新増設を想定しないという第6次エネ基の前提は崩れたと言えよう。

 第2に,第6次エネ基が示した2030年の電源構成見通しの実現性に対して,当初から指摘されていた疑念がいっそう強まっていることである。現に,同見通しでゼロエミッション電源比率を59%に高めたにもかかわらず,法的義務をともなうエネルギー供給高度化法の実際の運用では,その比率は従来どおりの44%に据え置かれたままである。30年には,今のペースでは再生可能エネルギー比率は36~38%に届きそうにないし,原子力比率20~22%を達成するのに必要な27基の原子炉の運転も実現困難で,せいぜい20基前後にとどまるだろう。

 第3に,LNG(液化天然ガス)の消費見通しが過小だった。第6次エネ基によれば,日本の30年における天然ガス消費量は年間5500万トン未満にとどまる。これは,日本の20年のLNG輸入量が7450万トンだった事実を想起すれば,2000万トン近い大幅な減少が生じることを意味する。しかも現時点においては,今年2月のロシアによるウクライナ侵攻を契機に,ヨーロッパ諸国も加わってLNGの国際的な争奪戦が激化の一途をたどっており,LNG価格も急騰している。このような状況下で過小な消費見通しの第6次エネ基を維持していては,LNG調達に関して日本勢の「買い負け」が生じることは避けられないし,実際に,それはすでに始まっている。

 第4に,そもそも30年の電源構成見通しを21年の時点で提示することは,あまり意味がなかった。電源構成見通しをわざわざ策定することの最大の目的は,関連事業者に対して,投資計画立案に資する目安を発信することにある。21年に第6次エネ基のなかで電源構成見通しを打ち出したとしても,関連事業者がそれを受けて電源投資計画を立案・実行するには,時間的制約が大きすぎる。わずか9年の期間しかないので,30年には間に合わないのである。したがって,第6次エネ基は,もともと30年ではなく40年をターゲットにして,電源構成見通しを打ち出すべきであった。

 以上の点から,第6次エネ基がすでに「死に体」であることは明らかである。とくに第1の点は重大で,本気で次世代革新炉の開発・建設を推進するのであれば,まず,エネ基の改訂に着手するべきだろう。11年の東京電力・福島第一原子力発電所事故後,資源エネルギー庁の幹部は,これまで何度も「いずれは原子力のリプレース・新増設を行う」と言い続けてきた。やるなら今しかないのである。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article2777.html)

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