世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.2632
世界経済評論IMPACT No.2632

ロシアのウクライナ侵攻:今後の世界と日本

高多理吉

(富士インターナショナルアカデミー 校長)

2022.08.15

従来の戦争を一変させた

 ロシアは中国の約1.8倍の面積を持つ文字通り世界一の国土を持ち,日本の45倍の面積を持つ国家である。これだけ広大な面積を持ちながら,ロシアは2月24日,なぜ,ウクライナ軍事侵攻を開始したのか,筆者は,次の4点で,ロシアを考えてみれば,ロシアという国,あるいはプーチン大統領の実像がより鮮明化すると考えている。

 まず,1点目は「地政学的観点から見たロシア」(海を隔てた国境「日・米」を含めれば,16か国と国境を接している),2点目は「西側諸国との勢力圏争い」,3点目は「ピョートル大帝以降の大国主義思想」,そして,4点目として,「アメリカと西欧諸国の誤った対応」(スターリン以来の宥和政策)である。

 絶対的権力を掌握したプーチン大統領は,かつて,ソ連崩壊を『20世紀最大の地政学的悲劇』であると述べたことで知られるが,ソ連崩壊によって,ロシア民族が分断されてしまったことを悔やんでおり,これを取り戻すのが,自らをピョートル大帝になぞらえた自分の役割だと信じている。

 このたびのロシアのウクライナ侵攻の背後の状況は,複雑であり,紙面の関係で割愛し,上記にとどめ,戦況について述べたい。

 このたびの戦争は,政治的目的を達成するための軍事的実行とそれ以外の,政治,経済,外交,プロパガンダを含む情報,心理作戦を展開する『ハイブリッド戦争』であり,ドローンと高機能ロケット砲など最新兵器が大きな役割を果たしている戦争で,これまでの戦争とは大きく異なることが明確である。

 そして,プーチンの大きな誤算は,2日から数日でウクライナを占領できると踏んでいたにもかかわらず,プーチンの予測を超えたウクライナ側の強力な反撃,NATO諸国の軍事援助による猛反撃で,目算がはずれ,スウェーデン,フィンランドのNATO加盟が合意されたほか,ロシアにとって絶対死守しなければならないクリミア半島まで,パルチザンや最新兵器によるとされる石油基地爆撃などで危うくなっている。

 戦争の行く末は,誰も予想できないが,長期にわたるというのが大方の見方である。核使用実施か否かも重大で,いったん事あれば,世界の破滅にも通じる。核使用がないにしても,停戦も含めた決着後の世界の様相は,これまでと異なるものとなるのは間違いない。

今後の世界と日本

 筆者は,今後の世界は,NATOを中心とするいわゆる西側の陣営と中ロを中心とするいわゆる東側の陣営の対立(新冷戦とも言われる),そして,旗幟を鮮明にしない諸国の『3極体制』になると予想している。

 この中で,日本は,西側陣営に属することにならざるをえない。しかし,全てにおいて,アメリカ一辺倒の日本ではなくて,日本自身が理念を持って,今後の世界に下記のような貢献を,多くの国民のコンセンサスを懸命の努力で得ながら,実行できる国になるべきである。

 軍事のハードパワーの議論だけではなく,ソフトパワーで我が国の持てる力量が試される局面に応える準備を平時においてなすべきであると考える。

 それは,アセアン諸国,アフリカ諸国に製造技術,食糧生産技術,医療技術,海水淡水化技術とそれに必要な自然エネルギーの協力等を,わが国の少子高齢化問題や雇用問題,コロナ対策,景気浮揚策等の施策と並行しながら実施することである。

 石橋湛山元総理がかつて強調していた「哲学的日本を構築せよ」という言葉が,心に響く。我が国に欠けているものは,普遍的倫理に反しない国家の理念・哲学ではなかろうか。筆者は,「気候変動問題」が人類の取り組むべき最大の問題だろうと考えている。戦争自体が甚大な環境破壊である。

 この課題を考えれば,戦争している場合ではない。人類存亡の帰趨がかかっているからである。本件に関しても,日本は先陣を切るべきであると強く考える。

 上記の実現は,実に困難が伴うであろうが,単なる理想論ではなく,人類の生存が関わっている。わが国のためにも,世界のためにも,真の実行が望まれているのである。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article2632.html)

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