世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.2604
世界経済評論IMPACT No.2604

地域エコシステム・ブランド論

村中 均

(常磐大学 教授)

2022.07.25

 近年,エコシステム(生態系)という言葉が,ICT産業を始め様々な分野で使用されている。本稿では,この概念を地域に適用する。ここでいう地域のエコシステムとは,地域内で,企業が生まれ成長する,製品やサービスが生産され消費される,経済循環のことであり,地域経済の活性化を意味している。2020年度から開始された第2期のまち・ひと・しごと創生総合戦略の中では,地域の特性を踏まえ,生産性が高い,稼ぐ地域の実現を政策目標の1つとし,地域経済の活性化とブランド化(力)を施策の方向性と位置付けている。そこで,本稿では,経済的な機能の観点から,地域エコシステムを,価値を創造する仕組みとして捉え,どのような構築の在り方が,地域のブランド力や地域経済の活性化につながっているのかということについて,説明を行ってみたい。

 地域エコシステムの基礎となるものは,バリューチェーンである。購買(原材料)→生産(加工)→流通(販売)という直接的な取引を行う活動から成り,直接財の取引関係を意味している。購買と生産は,特に価値を生み出し,流通や販売は,特に価値を伝えることを担う。地域内で,これらの活動の連携を図ること(例えば,6次産業化)は,一貫性のある地域ブランド力の向上につながることになる。一貫性のある地域ブランドとは,例えば,ある地域でとれた原材料を,当該地域で加工し,かつ販売することで,顧客の当該地域に対する一貫性のある認知とイメージを生み出すことを意味している。また,地域内でのバリューチェーンの連携は,価値を創造し地域内の生産と分配と支出の三面等価の成立につながり,移輸出の増大と移輸入の減少といった域際収支の向上に貢献するものである。

 バリューチェーンは産業毎に存在するものであり,地域内の産業は,例えば,農業・林業,水産業,商工業,観光業といった補完的な産業の重層構造から成り立っており,このことをレイヤー構造という。レイヤー構造とは補完財間の関係のことであり,ある財が売れると他の財も売れることで価値をもたらすことになる。そして,レイヤー構造の産業間の連携が図られることで(例えば,農業と水産業と商工業と観光業とが連携したガストロノミーツアー等),地域としての多様性,具体的には,豊かさや関連性といった,顧客の当該地域に対する認知そしてイメージが増すことになり,多様性のある地域ブランド力の向上につながる。その連携は,さらなる地域の価値につながっている。

 上記のことから,地域エコシステムとは,直接財(バリューチェーン)と補完財(レイヤー構造)から構成される地域の産業構造のことであり,その構築は地域ブランド力の基盤となることが分かる。ここで重要なことは,レイヤー構造上の産業間(補完財)とバリューチェーン上の活動間(直接財)の連携(インターフェース)をいかに図るかということである。連携が,ブランド力を強化し,地域経済を活性化させることにつながっている。レイヤー構造とバリューチェーンといった産業間や活動間の連携の促進には,提供する価値の基盤となるプラットフォーム(具体的には,中間支援組織の役割を担う企業や行政やNPO等)の構築が課題となる。

 以上のことについて,より詳細な説明を行っている概念的分析枠組みや事例に興味のある方は,筆者の以前の論稿(村中均「「住みたい」地域ブランド論-移住者起業の地域エコシステムの様相」『日本マーケティング学会カンファレンス・プロシーディングス』2021年,10,pp.117-124)を参照されたい。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article2604.html)

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