世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
日本の成長発展に不可欠なSEC制御システム
(エアノス・ジャパン 代表取締役)
2021.03.08
日本の制御システム
日本にもアメリカを手本にした「証券取引等監視委員会」が「金融庁」のスタッフとして存在する。しかしこれはアメリカのSECとは似て非なるものである。金融庁に属していて,独立した機関ではない。強力なエンフォースメント力機能はない。
日本は,アメリカとは違い,「治者の法」の国であり,国家が法をもって国民を治めるものになっており,法の執行は国家という治者に握られている。アメリカのSECは独立機関で,国民と一緒になり詐欺的行為の摘出と排除をしているので,それが適切に迅速に行われる。
日本は,「ペコラ委員会レポート」のような「データベース」を持っていない。しかも,日本では,詐欺的行為の中には本物のイノベーションがあり,それを見極めるという意識は全くない。日本では,損害賠償請求がほとんどなされていないし,懲罰的な「三倍賠償」という考え方もない。「証券取引等監視委員会」が詐欺的行為にたいして捜査して,損害賠償を請求するためには「公正取引委員会」による審議により「確定」がなければ執行できない。実際には公正取引委員会は審議して,事件を「不問処分」にすることが多い。日本は集団訴訟を制限している。日本ではいろいろの詐欺的行為が起こっても,どういう訳か国家がそれをもみ消すことが多い。日本はアメリカとは真逆の「波消し」である。
安倍政権での国会で議論されたいろいろの事件も殆ど「不問処分」により,もみ消して安倍内閣は逃げている。つまり日本は法治国家とは言えないところがある。
問題なのは,詐欺的行為が起こり捜査の手が伸びても,直ちに犯罪者の「資産を差し押さえる」ことができないので,犯罪者は奪った金を外に隠してしまい,被害者は損害賠償を請求しても犯罪者から金は戻らない。犯罪者は数年刑務所に入れば事が済み,隠した大きな金でまた次の犯罪を企む。日本は正に泥棒天国である。
9月22日,ジャパンライフ事件の捜査関係者は,ジャパンライフの経営が破綻する直前の2017年に,会長や社長が銀行の個人口座から大量の金を引き出し,外に隠したようであると報じた。
日本政府は,「未然防止」という名で,「コモノの犯罪」を摘発するが,「オオモノの犯罪」には手を付けない。常に「別件逮捕」で事件をもみ消している。
日本では,江戸時代に長谷川平蔵が率いる「火付け盗賊検め」があった。これは奉行所とは別の組織で,独立しており,多くの偵察者を使って,斬り捨て御免で,盗賊を退治する力を幕府から与えられていた。彼らは盗賊達に奇襲攻撃をかけて,盗賊が奪った金を取り戻した。「制御システム」は江戸時代の方が優れていた。
レントシーカーの摘出・排除
国の経済力を蝕むのは詐欺的行為だけではない。日本で問題なのは,詐欺的行為よりも,利得権者,利益団体,政商という「レントシーカー」である。レントシーカーとは,国,地方公共団体に取り入り,国の規制,条例を変更させ,国の財産・税金,政府の補助金を奪い取るものである。デフレや不況になると,通常のビジネスでは儲からないから,レントシーカー達は国から金をむしり取ろうとする。政府予算,補正予算からどのようにして金をむしり取ろうかといろいろ策を練っている。
安倍政権のときは,悪質なレントシーカーが国に取り入り,国の財産を蝕んできた。安倍政権の「特区制度」は,特定レントシーカーに独占権を与えるものであった。「教育改革」と言って森友学園や加計学園に儲けさせる。「大学入試改革委員会」と言ってTOEFL,IELTS,ベネッセに仕事をさせる。「持続化給付金」でデザインサービス協議会,電通,パソナなどに中抜きさせる。「経済産業省補助金事業」に電通の子会社の環境共創イニシアチブ1社に中抜きさせる。「GoToキャンペーン,GoToイート」でツーリズム産業共同指定体,全国旅行協議会などに中抜きさせる。「大学入試改革委員会」でTOEFL,IELTS,ベネッセなどを起用する。「非正規社員制度」の設置で,パソナに派遣業をやらせる。「東京オリンピック」で儲けようとするレントシーカーがまだ蠢いている。
「未来投資審議会」,「公務員制度改革委員会」,「働き方改革委員会」などのプロジェクトの委員に,レントシーカーを任命して,誘導的に都合の良い規制をつくり,国の財産・税金を奪い取らせている。政府はレントシーカーを積極的に作っていて,それが発覚して,事件になっても,それを力ずくでもみ消してしまう。これは政府が日本国家を弱体化させていることになる。このようなことが起こらないようにするためには,こうしたプロジェクトの委員会の委員にはレントシーカーという利害関係者を起用してはならない。
自国内の「内敵」としてのレントシーカーだけではなく,アメリカや中国が「サイレント・インベージョン」で,日本の国の財産を収奪している。アメリカは,「司法産業」と呼ばれているが,アメリカ司法省が外国企業に対していろいろと難癖をつけて金を巻き上げている。トヨタ自動車やタカタは,ブレーキの問題やエアーバックの問題で,アメリカから膨大な金を巻き上げられた。日本の多くの企業が「談合」という難癖をつけられ,アメリカから金を巻き上げられている。言って見れば,これはアメリカの「詐欺的行為」である。アメリカは,ペコラ委員会レポートのデータベースで「詐欺師・泥棒の手口」を良く知っており,それを使って日本を攻撃してくる。
中国は「サイレント・インベージョン」でいろいろの形で日本の富を収奪している。日本の土地を買い占め,中国村をあちこちにつくっている。TikTokやHuawei通信機器などで,個人情報データを吸い上げている。アメリカのトランプがこれを叩いている。これから外からのこうした攻撃が激しくなるので,それを迎え撃つ強力な「制御システム」を確立しなければならない。
日本版「SEC制御システム」の確立
現在の日本の社会は「土台」と「上部構造」がずれており,コンフリクトを起こしている。日本の今日の「証券等取引監視委員会」は独立した権限もなく,機能していない。詐欺的行為を摘発し,迅速に排除する能力を持っていない。特に問題なのは「エンフォースメント部隊」がいないことだ。
1972年の協同飼料事件のおりに,日本の「証券取引監視委員会」には問題があり,日本にも「アメリカSEC」のような「制御システム」を創る必要があるとして,いろいろの人が動いたが,政府は動かなかった。そして2004年ころにもまた「証券行政の改革」として,アメリカのSECのように,独立性をもつ準司法機関として,エンフォースメント力を持つ証券取引委員会を作ろうという声があがったが,これも潰された。日本政府はどうも強力な「制御システム」を創る気がなく,覚悟がないのかもしれない。あるは,省庁の縄張り争いで,金融庁が監視部門を自分の支配下に置いておきたいということかもしれない。日本の各省庁はその部門の利益にならないことは決してやらない。
そんな状態であるが,日本国家の「高いビジョン」と「基本方針」を定め,「制御システム」としての「証券取引等監視委員会」の抜本的な改革と検察庁の「厳正公平・不偏不党」への改革をするための専門委員会を作って,改革原案を作り,国会で議論して決議する必要がある。官邸だけではなく,日本の優秀な官僚をこの立案に参画させ,これを改革し,日本がこれからの国際社会で力強く発展できるようにしなければならない。これがなければ日本の発展はあり得ない。
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