世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1966
世界経済評論IMPACT No.1966

中国のデジタル化とその毒性

三輪晴治

(エアノス・ジャパン 代表取締役)

2020.12.07

 中国は「先端デジタル技術」を国家戦略として開発している。ある分野ではアメリカの技術を凌駕しているものもある。特に社会システムとしてのデジタル化で,技術的にリスクのあるもので,民主主義国ではすぐに実験できないことを,フィールドでどんどん実験し,技術の開発を押し進めている。

 しかし中国ではこのソフト化,デジタル化は,中国共産党の中国社会のコントロールシステムとして使われている。ソ連でもそうであったが,共産主義社会,全体主義社会は,人民の反抗を徹底的に潰し,排除しなければ崩壊してしまうものである。つまり中国は,基本的には監視社会で,これにデジタル技術を使い,反政府的な動きを監視し,排除するシステムを作っている。中国は今「デジタル人民元」を実験している。USドルにリンクした人民元を,ドルから切り離すために進められているが,しかしデジタル人民元の大きな目的は,これにより人と金の動きを総て把握し,人民をコントロールすることである。

 「中国国家情報法」で,中国国民は持っている情報を共産党に全部提供しなければならず,また共産党が国民に他国からある情報を入手せよと命令したら国民はそれに従わなければならない。これにより共産党は,国営企業,民営企業,人民の持つ全ての情報,データを共産党が吸い上げて,共産党がこのデータ・情報を使って国をコントロールする。勿論中国在住の外国企業および外国人からも情報データを吸い上げている。民間企業にも共産党の党員が常駐してこれをコントロールしている。

 中国のバイトダンスのTikTokもこれで得たユーザーの個人情報を共産党に提供しなければならない。アメリカにも日本にも多くの若者のユーザーがいるが,その個人情報は中国共産党に流れる。この個人情報を中国共産党が悪用する恐れがある。だから「TikTokのアメリカのユーザーの個人データが中国政府に流れ,悪用される安全保障上の問題がある」ということでトランプはTikTokのアメリカ事業をアメリカに売却せよと迫っている。(TikTokは基本技術を開発したアメリカ企業を買収してスタートした)。

 中国製の監視カメラやセンサー,ファーウエーの5G通信機器も,メンテナンス用のバックドア―で取得した情報が中国共産党に流れるようになっている。中国共産党はネット上を検問し,好ましくないものを削除し,プロバガンダにも利用している。中国製のデジタル機器は,人民を監視しコントロールするものとして使われている。

 デジタル社会のなかで重要な機器である「ドローン」。これは中国製が世界の80%を占めている。ドローンは「空飛ぶスマホ」,「空飛ぶ車」,「空飛ぶ兵器」と言われている。中国製のドローンは外国でも多く使われ,日本政府も多くの中国製ドローンを使っているが,ドローンがキャッチした情報は中国共産党に流れていると言われている。

 中国は人民を中国の流儀で評価し「信用スコア」制を実施している。「ゴマ信用の信用スコア」が高いと低金利で融資を受けられ,お見合いで有利になるという。これは人民に取って今のところメリットがあると思われており,買いモノ,移動,事務所に入るにも顔認証が自動でなされ,便利であると感じている。しかしこれは人民をコントロールする監視社会の一つである。

 最近日本も中国の真似をして,みずほ銀行とソフトバンクが設立した「Jスコア」やNTTドコモの「ドコモスコアリング」が「スコアリング」をやり始めている。これは顧客の囲い込みとして使われているが,ユーザーが自ら設定を変えない限り同意と見なされ自動的にスコアされてしまう。これが個人の格付けになり,差別化につながりかねない。

 中国共産党は海外からいろいろの情報を獲っているが,中国の持っている情報は外国には決してシェアーしない。「グレートバリアー」という「サイバーの万里の長城」を築いて,外からの侵入をブロックしているが,外国にはどんどん侵入している。

 中国は,どんなプロジェクトも最初の段階は相手に対して都合の良いものを提供してスタートするが,だんだん人民をコントロールする仕組みに変えてゆく。産業でも最初は中国に進出した日本企業には儲けさせるが,日本の技術を盗み日本のものとそっくりの商品を中国企業に造らせ,だんだん日本企業を衰退させる。今米中戦争で中国経済が苦しくなっており,在中の外国企業から利益をどんどん吸い上げている。中国に進出している日本企業もそれに気付かなければならない。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1966.html)

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