世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
持続可能な開発目標(SDGs)議論の経緯
(静岡県立大学国際関係学部 講師)
2020.03.02
現在,日本をはじめとして,先進国や途上国を問わずに,世界中で持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)が注目を集めている。民間企業や政府,自治体などの公共団体,NGOなどの市民社会,学校など教育機関もこぞって,SDGsへの取組みを表明している。まさに,世はSDGsブームといった様相を呈している。
SDGsとは何か? SDGsは,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標であり,17の目標から構成されている。17の目標を列挙することは,紙面の制約上難しいので,関心のある人は,外務省のHPなどを参照して欲しい。そして,SDGsはミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)の後継である。以上の説明は外務省のHPからによるものである。
SDGsはMDGsを引き継いでいるので,SDGsを理解するにはMDGsと何かを知る必要がある。MDGsは2000年9月の国連ミレニアムサミットで採択された国連ミレニアム宣言と1990年代に開催された主要な国際会議やサミットでの開発目標をまとめたものである。MDGsは国際社会の支援を必要とする課題に関して2015年までに達成するという期限付きの8つの目標を掲げている。8つの目標は,①極度の貧困と飢餓の撲滅,②普遍的な初等教育の達成,③ジェンダー平等の推進と女性の地位向上,④乳幼児死亡率の削減,⑤妊産婦の健康の改善,⑥HIV/エイズ,マラリア,その他の疾病のまん延の防止,⑦環境の持続可能性確保,⑧開発のためのグローバルなパートナーシップの推進である。
以上のMDGsの説明は外務省や国連開発計画(UNDP)によるものである。これから明らかになるのは,MDGsは貧困削減や初等教育の達成など,途上国の生活水準の向上は主目的にしたものであることである。なお,MDGsの達成状況については,本コラムとは関係がないため,知りたい方は国連のMDGs関連のHPを参照してほしい。
このMDGsは先進国や国際機関が中心になってまとめた経緯があり,当事国である途上国が十分に関与できなかった反省を踏まえて,途上国や市民団体などすべての利害関係者の意見を反映させたのがSDGsである。したがって,SDGsは途上国のみならず,先進国も含めた世界のすべての国の利害関係者が取り組むことになった。
SDGsはMDGsの後継であり,そのMDGsは以前から存在していた様々な規範や合意が土台となり形成された。つまり,SDGsの概念は,国際開発に関するこれまでの長い歴史の中で体現されてきたものであり,この流れの中でSDGsの17の目標を位置づける必要がある。民間企業や政府,学校,NGOなどがSDGsに取り組むときは,自分の取組みが17の目標のどれに当てはまるかだけでなく,国際開発に関するこれまでの歴史の中でどう位置づけられるかまでを考える必要があろう。
そうすることにより,現在のSDGsの取組みを一過性のブームとするのではなく,SDGsの狙いである国際開発への持続的な貢献に寄与することができるのではないだろうか。
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