世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
欧州連合企業BREXIT後,世界上位100社にたった12社:企業の成長戦略 競争が寡占か
(パリクラブ日仏経済フォーラム 議長)
2019.07.15
企業規模拡大か市場競争か
欧州企業はどうすれば米国と中国の多国籍企業に対抗できるか。産業の国際競争力をどのように強化していくのか,欧州にとってますます正念場にさしかかってきた。BREXITで英国が脱落すると欧州連合に属する企業は時価総額ベースで世界上位100社には10年前の28社からたった12社しかランクされなくなってしまう。欧州議会選挙が終わった今,ブラッセルの欧州委員会では欧州企業の国際競争力の強化が緊急課題に浮かび上がってきた。その背景には欧州連合は産業の競争優位をその経済外交政策の中軸に置こうとしているからである。鉄道部門におけるシーメンスとアルストムの合併計画が欧州連合の競争コミショナー,エステガーの反対で実現しなかったことは,フランスでもドイツでの予想外のことでショックが大きかった。この鉄道車両分野の独仏提携交渉の失敗については,EU競争政策コミッショナーの反対が主たる理由であるが,これには独仏両国で落胆の声が多い。EU委員会は潜在的に世界第一位の鉄道車両企業になるほどの独占的な規模を形成することが消費者の利益に繋がらないと結論づけたのである。しかし中国の競争相手のCRRC(中国中車有限公司)はこのアルストム・シーメンス両社合せてもその2倍の規模なのである。フランスのブルノ・ル・メール経済財政大臣は,近い将来,欧州市場でも中国の電車が走行するようになるとさえ予想している。しかし欧州はすでに欧州製の太陽パネルの分野では中国製の前にほとんど崩壊してしまった。競争条件の違う中国に対抗するのはほとんど不可能になりつつあるとする専門家も多い。
通信・鉄道部門の中国企業にいかに対抗するか
欧州連合は英国が離脱した後,欧州連合加盟国企業の世界上位ランキング企業の減少を深刻に受け止めている。第5世代移動通信システムについて,ノキアやエリクソンは中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」との間でもっと張り合わなければならなのに,欧州の大企業は十分に資本を動員することもできず,思い切った先端の技術革新の戦略もなく,このままでは経済的な覇権を奪われてしまうかも知れない。欧州議会選挙の後の欧州員会の緊急課題に浮かび上がってきたのは,欧州連合諸国の多くが経済主権をその外交政策のひとつの中軸に置こうとしていることである。鉄道部門におけるシーメンスとアルストムの合併が欧州連合競争コミショナー・エステガーの反対で実現しなかったことは,フランスでもドイツでの予想外のことでショックが大きかった。鉄道車両分野でシーメン(独)とアルストム(仏)の提携交渉の失敗については,EU競争政策コミッショナーの反対が主たる理由であるが,これには独仏両国で落胆の声が多い。EU委員会は潜在的に世界第一位の鉄道車両企業になることによって独占を形成することが消費者の利益に繋がらないとしたのである。しかし中国の競争相手のCRRCはこのアルストム・シーメンス両社合せてもその2倍の規模である。
一枚岩でない競争戦略
ルメール大臣は欧州でもそのうち中国の電車が登場するであろうとしている。しかしすでに欧州製の太陽パネルは中国製の前にほとんど崩壊してしまった。競争条件の違う中国に対抗するのはほとんど不可能であると言われている。欧州連合は英国の抜けた後,世界上位100社に欧州連合加盟国企業は12社しかもう顔を連ねていない。10年前には28社も入っていたのに。第5通信世代分野においてノキアやエリクソンは中国の通信機器大手「華為技術」ファーウェイとの間でもっと張り合わなければならない。欧州の大企業は十分に資本を動員することもできず,思い切った先端の技術革新の戦略もなく,このままでは経済的な覇権を奪われてしまう可能性もある。
ドイツのペーター・アルトマイアー経済大臣は欧州レベルの産業政策についてこれまで比較的寡黙であったのに,このところ欧州レベルでの産業政策を推進することはやぶさかでないと言い始めた。しかしこれについてはドイツ産業の強靭さの基盤を形成していると言われる中小企業(Mittelstand)の側からすでに公的介入につながることに強い批判が出ているが,フランスでは共通の絞られた分野であれば喜んで一緒にこのようなプロジェクトを推進してもよいとの声が出ている。
具体的にはまず電気自動車のバッテリーである。現在,2000年代半ばより開発を始めている韓国,中国,日本の企業に市場はほぼ100%牛耳られている。欧州の自動車メーカーは2020年までのCO2基準ゼロ達成について自動車の電気化でしか達成できないという状況にある。この市場を欧州でも育成しないと,急速に発展しているこのマーケットをみすみす見逃してしまうことになる。「フランスの明日の自動車産業時代」という報告書を公表したメタ・コンサルタント社長のペラタ氏は,マクロン大統領に提出したこの報告書の中で,自動産業の中核部門がすべて東アジアに移転してしまうかもしれないと不安を表明したところである。
成長戦略と経営統治 どうバランス
ナティクシス(Natixis)研究所エコノミスト,デュルク・シャマセは「このままでは自動車の電子デジタル化に遅れを取っており数年先にドイツ経済に深刻な影響を与えるだろう」と予言している。なにもしなければドイツの自動車産業は2030年までに50万人の雇用と330億ユーロの損失を被るであろうしている。こういうことから独仏の自動車業界は共同で関連産業を巻き込んで,17億ユーロにも上る産業助成をすることに乗り出そうとしているが,それでもまだ不十分と言われている。独仏間の産業協力は人口知能(IT)分野にも及ぼうとしている。それでも自動運転分野ではその遅れも顕著であるものの,まだ欧州レベルの協調体制には程遠いとされている。
企業の成長戦略はグローバル化のなかで外部拡大型の成長戦略に傾く傾向があり2018年以降この傾向が一層,目立つようになった。しかし欧州ではFCA(フィアット・クラスラー・オートモビル)との合併を急いだルノーや,モンサントのバイエル買収などに待ったがかかったように,これらの企業合併後の企業統治に不安を煽ることになった。これはルノーと日産の新役員人事や新たな経営体制にも表れているように,単純に企業規模が大きくなればそれでいいという時代ではなくなってきた証左である。
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