世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1391

BREXITと日本

真田幸光

(愛知淑徳大学ビジネス学部ビジネス研究科 教授)

2019.06.24

 筆者は,もう20年ほど前より,日本は,現行の世界秩序の一翼たる英国と連携すべきであるとの考え方を背景に,「新日英同盟の締結を急ぐべきである」と主張,自著に於いてもそうしたことを書いてきた。

 しかし,最近は,日本よりも中国本土が英国に擦り寄り,連携を強めようとしている。特に,BREXITにより,経済力が低下するであろう英国をカバーすべく,中国本土との連携を強める可能性を英国自身が示す可能性も出てきており,筆者としては,忸怩たる思いで現状を見ている。しかし,アヘン戦争の傷跡を残す英中両国が簡単に真の連携をすることはないと筆者は見ており,日本は,英国王室よりも長い歴史を持つ皇室を背景に再び,英国と連携して,「英国にはフロントの世界標準を全てお任せし,日本は実体経済での目に見えにくい世界標準を任せてもらい,英国の顔をしっかりと立てながら,しかし,日本の強みを生かしつつ,日本らしく世界の中で生き抜く国を目指すべきである」と考えている。

 さて,そうしたことを意識しながら,ここで,日英の共通点を以下に列挙,簡単に確認したい。

  • 1.島国である:日本とイギリスはいずれも大陸の端に位置する島国で,他の国から離れた場所に位置し,社会的行動は違った発展を遂げている。
  • 2.王室/皇室:前述した通り,世界の中で長き,継続した歴史を持つ王室と皇室が存在する。こうした時間,歴史はお金では買えない。
  • 3.車は左側通行:これは分かりやすい標準の共通項である。
  • 4.婉曲な表現:イギリス人と日本人は,丁寧な言葉を使う必要がない場面でもあえて使うことがしばしばあり,同じ英語でもストレートな表現を使いがちな米国と英国は異なる。
  • 5.列を作り守ること:これもわかり易い共通項である。列を作ること,即ち,秩序を作り,守ることに日英は長けていると思う。
  • 6.不文律のルール:法治国家でありながらも,不文律のルールがあり,また,それを徹底している国である。
  • 7.静かさを好む:静かさを好む人が多く,騒々しい人を厳しく見守るところなどは,中国本土などには全く感じられない特徴であろう。こうしたことからも英中は多分,本質的には相容れないと思う。
  • 8.謙虚な心:謙虚さがあることが品格の高さに繋がると考える人が多いと思う。

 まだまだたくさんの共通点はあろうがざっと見てもこうした共通点が日英には存在していると考える。

 ところで,その英国は今,「経済力の低下のリスクを冒しても,欧州連合からの離脱」に向かい,BREXITを進めようとしている。

 そして,筆者の知る限り,キャメロン前首相とその政権は当初,「混乱の欧州連合を英国がテコ入れし,欧州連合域内での英国の存在感を高め,英国の存在を絶対的なものにしていく」という戦略から,「欧州連合残留」の考え方が強かったのではないかと見ているが,今の英国の主流派は,「欧州連合からの離脱」に向かっている。

 筆者が見るところ,英国のこうした方向転換の一つの大きな背景には,「2015年にシリアなどから100万人もの難民が欧州に押し寄せた未曽有の難民危機と,2015年11月のフランス・パリで発生した同時多発テロなど過激組織ISの影響を受けたホームグローン(欧州育ち)テロリストによる大規模なテロの続発にある」と見ている。

 欧州連合は,ご高尚の通り,人,物,資本,サービスの「4つの移動の自由」を原則に掲げ,「開かれた国境」という理想を掲げてきたが,この事態は,それが現実には難しい,少なくとも,今は時期尚早である,つまり,欧州連合自体が統治能力,危機対処能力に欠けているということが明らかされた,その実態を示す出来事となったと英国民は判断したのであると私は考えている。

 そして,英国は,「島国である」との特性を生かし,英国を軸としたグローバリゼーションに走る前に,一旦,戦線を縮小し,上述したような,日英に共通して見られるような,「英国のアイデンティティを守るべく」,たとえ,経済が一旦,不冴えとなっても,「英国の英国らしさを守る」と言う動きに出た,それが,今回の,「BREXIT」の動きの底流であり,だからこそ,英国のアイデンティティの中核たる,「英国王室」もBREXITを否定はしていないと思う。

 さて,こうして考える時,我が国・日本は如何なものだろうか。

  • *安易な外国人労働者の受け入れ
  • *種子法の改正による国有種の安全な種の駆逐
  • *金融関連法の国際化に伴う国富の海外流出

などを考えれば,「英国のように,日本のアイデンティティを守る為に,国の政策姿勢を180度方向変換するべきなのではないか」と筆者は考えている。

 そして,その為にも,「新日英同盟の締結を急ぎ,英国とも連携しながら,日英が固有に持つアイデンティティを育み,しかし,世界に真にお役に立つ,日本を構築する」と言う姿勢に早期に転じるべきであると筆者は考えている。

 如何であろうか?

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