世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1351

固定価格買取制度(FIT)による再生可能エネルギーの導入拡大とその教訓

武石礼司

(東京国際大学 教授)

2019.04.29

 2012年から導入された固定価格買取制度(FIT)の効果により,再生可能エネルギー,特に太陽光発電の導入拡大が生じた。太陽光発電は設置が容易で,風力などの他の再生可能エネルギーと比べても導入時間がかからず,しかも,投資を行うことが節税対策にもなったために導入の大ブームが生じた。世界の太陽光発電のランキングで,中国,米国に次いで世界第3位に日本が躍り出る成果が得られた。

 しかし,固定価格買取制度は,業界で「劇薬」であると言われるように,導入量を増やす効果はあったものの,電力消費者の支払う賦課金が年々増大すると同時に,様々な課題も生じさせることになった。

 毎月の電気代の支払いが増加したのが消費者としての第一の課題であり,すでに電気代の1割はFITの再生可能エネルギー分となっている。今後,さらなる増大が不可避となっている。

 世界で突出した高価格での太陽光発電からの買取は維持できず,政府は引き下げを急ぐことになる。買取価格が下がるとともに,太陽光発電ブームは鎮静化に向かった。

 続いて生じたのがバイオマス発電の導入ブームである。太陽光発電で成功し,億円単位での収益を得た企業も含め,森林の未利用材(間伐材など)および一般材などを利用した高い価格でのバイオマス発電の買取制度を利用しようと,多数のバイオマス発電所が計画されるに至った。

 太陽光発電とは異なり,バイオマス発電は燃料としての木材等のバイオマスを供給し続ける必要がある。日本の国土の3分の2が森林であり,戦後に植林された杉・ヒノキなどが伐採期を迎えているが,森林業に携わる人手は足りず,林道も整備されておらず,木材生産量を急増できない。計画されているバイオマス発電所で必要とされる材木量に対して,国内供給可能量は5分の1に過ぎないと言われるほどの供給不足が生じることになった。しかも,木材生産拡大のためには,木材取引の商慣習,樹種,森林の植生・伐採の歴史等を知る必要があるが,俄か勉強では全く追いつかない。

 それでも,国内材の供給増大が難しいために,輸入材で発電し,高いFIT価格のメリットを享受しようとする事業者が続出し,輸入急増を生じさせている。カナダ等から材木を輸入し,またインドネシアおよびマレーシア等からパーム油搾油後の椰子殻を輸入し,FIT制度の下,売電する計画が,日本の沿岸地域で目白押しとなった。FIT制度のバイオマス発電導入は,本来,国内材の利用拡大を目指したはずである。森林認証(SFC)を取得済みとは言え,カナダ材を,太平洋を越えて輸入して発電することは,FIT制度の導入時において予定されていない。

 しかも,国内の森林の有効利用が進まない別の理由も,国内材を利用したバイオマス発電が日本国内の各所で計画される中で明らかとなった。

 そもそも日本の中には土地区画が不明,面積も不詳な場所が多く,不動産登記法で言う地籍図(第14条)が未整備なところも多い。「公図」を「地籍図」の代わりに用いようとしても,「縄伸び」が多く,実際の面積とは合っておらず,昨今のように山林の所有者が不在地主である場合が多いために,森林の利用が阻害されている。

 さらに,「観光ビザで来日しても土地が買える」と言われるように,世界で異例に外国人の土地取得に制約が少ないとされる日本において,しかも土地取得をした後の不動産登記が義務ではないために,実際に誰が土地を取得しているか不明という場合がある。このため,固定資産税の賦課ができない場合も生じている。FIT制度による世界でも稀な優遇を受けることができる再生可能エネルギー発電による電力買取制度が導入されたことで,国外からのFIT向けの土地取得を目指す動きが生じた。

 すでに,太陽光発電において,海外資本による,日本国内の丘陵地あるいは山中の南向き斜面を狙った太陽光パネルの設置が各地で生じた。バイオマスにおいても,山林取得を目指した動きが生じている。

 このように,FIT制度で導入の大ブームが生じたことで,日本の土地制度の不備が露わとなってきた。不動産登記法だけに止まる問題ではなく,地震,土砂崩れなどによる災害復旧のために土地の私権が制約を受け,さらには,国土保全という安全保障上の要請に応えて土地の私権が制約を受けるべき場合が明らかにあり得る。FIT制度があまりにも利益を出しやすい制度であったために,国外からの土地取得が目指されているが,諸外国と比べて突出して私権保護を優先し,私権により公共の利益が制約を受けてしまう日本の土地制度を,見直しする必要があることは明らかである。

 土地を保有し利用する際には,公共の利益が優先し,それに従う必要があることを明記していくことが,そもそも憲法上で必要ではないかという点から検討していく必要が生じている。

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