世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1330

新たな外商投資法と日本の対中投資

江原規由

((一財)国際貿易投資研究所 研究主幹)

2019.04.08

 今年3月の第13期全国人民代表大会(日本の国会に相当)での「政府活動報告」の注目点は,①今年の経済成長率予測が6.0%から6.5%と近年ではこれまでになく低く設定されたこと,②外商投資法が可決し2020年1月1日より施行されることになったことなどが指摘できる。前者については,いわば,中国経済が本格的なダイエットに入ったことを意味している。すなわち,中国は量的,速度重視の成長からイノベーションに基づくハイクオリティ(中文:高質量)発展を図るとしている。後者は,贅肉を削り筋肉をつけるダイエットの,いわば,筋肉といえる。

 1978年からの改革開放により,中国は世界第二位の経済大国,世界の工場として世界経済でプレゼンスを大いに高めた。この点,外資企業に中国市場を段階的に開放してきたところによる大きかった。中国の外商投資法の施行には,そんな過去の経験を次元を変えてもう一度実現しようとの狙いが見え隠れする。

 今回の外商投資法は,中外外資経営企業法(1979年),外資企業法(1986年),中外合作経営企業法(1988年)の「外資3法」を(32年ぶりに)一本化し,国内外情勢の変化に対応させ,改革深化と開放拡大を狙った措置とされる。その特徴は,「内資・外資一致の原則」,すなわち,対中投資における外国人投資家に対する制限を緩和し,①中国人投資家と同等に待遇を得られるようにすること,②外国人投資家に投資の機会(ハイテク分野,製造業など)を拡大すること,③外国人投資家の対中投資における信頼感を強化すること,にある。この点,第13期全人代での記者会見で,商務部(省)の王受文副部長(副大臣)は,こう説明している。“外商投資法は外資企業に参入前国民待遇や対中投資のネガティブ管理制度を確立した。また,中国では外資企業が政府調達などに十分参加できない,地方では強制圧力による技術開示や企業への譲渡が求められる。知的財産権の保護が不十分であり,外資企業が不利益を被っている,との不満をよく耳にするが,外商投資法は公平な競争環境を整えた”。

 目下,中国は実質的に世界第2位の外資受入国でもある。改革開放の当初,対中投資も含め,中国経済の発展に最も協力したのが日本であった。その日本に対中投資拡大への中国の熱い視線が注がれている。このところ,中国から投資誘致を目的とする訪日ミッションが目立つようになったのもその表れと見られる。商務部元副部長で現在中国国際経済交流センター副理事長の魏建国氏は,“中国では内需が拡大しており,日本企業の対中投資に新たな変化が出現している。ハイエンド製造業等領域での投資拡大や株式投資などによる経営参画型投資が増えつつある。総じて,「投資-製品輸出型」から「投資―現地消費型」へ定着している”。さらに,“今回の外商投資法との関連でいえば,22条で強制的な技術移転を禁じられており,知的財産権保護を強化している。日本企業は地の利を生かし,欧米企業に先駆けて,特に,医療衛生,金融サービス分野への投資を拡大することを期待する”とした。

 確かに,対中投資に関心と期待をもつ日本企業は少なくない。今回の外商投資法の施行はこれに弾みをつける一大事であるに違いない。ただ,魏建国氏のいう中国国内での消費拡大のチャンス拡大もさることながら,今後中国には,FTA網の整備,とりわけ,RCEP,日中韓FTAなどで日本と連携してこれを実現させ,さらに,一帯一路で経済交流の新たな機会拡大を創出するなど,中国が第3国投資の拠点となるような大胆な改革開放の深化,法整備が求められるのではないだろうか。

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