世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1043

中東大乱の予感:トランプ政権大規模人事異動の意味

吉川圭一

(Global Issues Institute(株) CEO)

2018.04.02

 私は1月8日に投稿した記事『「世界新秩序」の形成に備えよ!』の中で以下のように述べている。「例えばティラーソン国務長官の辞任は時間の問題であり,タカ派のポンペオCIA長官の昇格が予想される。もしも北朝鮮が米国ないし同盟国の領海近くでミサイルや核の実験を行えば,ポンペオ氏は米国への攻撃と同等に見なし北への攻撃に積極的とも言われている」。この予測も当たったと言って良いだろう。しかし,この記事を投稿した頃から,ポンペオ氏は国務省と別ルートで北朝鮮に接触し,米朝会談を実現したのも彼だという説もある。何れにしてもポンペオ氏は対北朝鮮より対イラン強硬派だった。

 米国内の報道ではティラーソンの解任の最大の理由は,彼がイラン核合意破棄に反対し続けたからだという説が有力と思う。ポンペオ氏はイラン核合意破棄論者である。

 イラン核合意を破棄すれば中東での戦乱の可能性が高まる。実は軍人こそ誰より戦争を嫌う。部下を戦死させたくないからである。そこでマクマスターNSC担当大統領補佐官もイラン核合意維持論者でティラーソンとは協力して来た。

 そこでマクマスターも解任され,その後任としては,「バノン派の逆襲は,あるか?―米中激突の予感」でも予測した通り超保守派のボルトン元国連大使が指名された。

 ボルトン氏は最近トランプ氏と良く面会していたという。そして彼は最近,北朝鮮問題に関しては米朝会談を評価する推進論者になっているという。もちろん彼もイラン核合意破棄論者である。

 どうやら私が繰り返し主張したイスラエルを鼎とした米露の協調が水面下で進んでいるようだ。今のイスラエルには,シリアに6万人の兵力を展開するイランの脅威を取り除くことが最大の懸案である。

 実はティラーソンの方が親ロシア派でポンペオの方が反ロシア派なのだが,イスラエルというパイプがトランプ政権に出来たのなら,ティラーソンの役割は終わった。それも今回の解任劇の遠因ではないかと少なくとも私は思う。

 そして反ロシア派ではあっても対イラン強硬派のポンペオの方が,対話派のティラーソンよりもイスラエルそして場合によっては自らの抑制が効かなくなって来たイランを警戒し始めたロシアに取っても,望ましい人選だったのかも知れない。そして北朝鮮も含めた“ならず者国家”退治の代表者だったボルトン氏の最近の北朝鮮問題への発言である。

 因みにボルトン氏はイスラエルの安全のために国内に人権問題が多かったエジプトのムバラク政権の温存も主張したことがある。今となっては何か暗示的である。

 どうやら今年中にも中東で大規模な混乱が起こり,それが治るまで北朝鮮は米露と協調する。そのような取引がロシアの仲介で北朝鮮との間で出来たのかもしれない。

 この中東の混乱は何時ごろ起きるか? 前回,書いたようにペンシルベニアの共和党の地盤で共和党候補が敗れた。共和党は中間選挙で不利な状況になりつつある。そうであれば中間選挙までに米国民の意識が団結できるような戦争を起こすことは共和党にとって一つの方法だろう。

 つまり夏から秋口が一つの目安だろう。しかもイラン核合意の次の見直し期限は5月12日である。米国の保守派の間では,それを機に同合意を解消すべきという意見も多い。それを機会に何かが起るのではないか?そのため5月に米朝会談が設定されたのではないか?

 このような状況は「バノン的なもの逆襲は,あるか?——米中激突の予感」の中でも書いたように「そこで例えば北朝鮮に関しては,アメリカにも届くミサイルを持たせない代わりに,しばらくは金正恩体制を温存するような話し合いも,米露間で出来ている可能性も心配される。(中略)米朝の間で,このような決着が着くことは,日本が半永久的に数百発の北朝鮮の中距離ミサイルの脅威に晒され続けることを意味する」。それは非常に望ましくない。そこで「シリアのアサド政権に関しても,米露間で類似の話し合いが出来ているようにも思われるが,もしアサド政権が大規模に毒ガスを使ったりすれば,また話は変わってくることは,約1年前に証明されている。因みに北朝鮮はシリアと毒ガスの開発で協力していると言う情報もある。そのような問題を梃子にして日本は,米露と北朝鮮の間に楔を打ち込む政策を考えて行くべきだろう」。

 イランと北朝鮮は毒ガスどころか核やミサイルの共同開発も行っていると言われる。その問題も日本にとって,望ましくない状況に放置されないように米国等に働きかける重要な鍵になるだろう。

 ポンペオ新国務長官もボルトン氏も,もともと北朝鮮強硬派だった。今後の米朝首脳会談も,どう展開するか分からない。

また米朝露の協調は中国にとって脅威なのである。北のミサイルが北京に飛んでくるかも知れない。それを考えると,これから中国による米朝会談への妨害が始まるかも知れない。金正恩の訪中も何か関係がある可能性も高い。

 そうなってくれば,また話は変わって来る。タカ派のポンペオ,ボルトン両氏に期待したいと思う。

関連記事

吉川圭一

国際政治

国際政治

アングロアメリカ

アングロアメリカ

最新のコラム